「にー。さーん。よーん。ごー。ろーく。なー・・・はい、ジロー先輩寝ない!」


「無理ー。眠いー。ちゃん、代わりにやってー。」


「私がジロー先輩の代わりにやって、ジロー先輩に筋肉がつくんですか。はい、あと43回!」


「ぅえー・・・。なんかやる気でないC」


「・・・じゃあ、何したら、やる気出てくれるんですか。」


「今日のお昼ごはん、俺の隣に座って!」


「それくらい、かまいませんけど。それで良いんですか?」


「うんうん!超オッケー!最近、ちゃんとゆっくりお話できなかったんだもん!」








よーし、あと43回!と言って、また腹筋を続けるジロー先輩。

お話できなかったんだもん、だって。

かわいーなぁー。

すっごく嬉しそうにしているし、なんか・・・








「ジロー先輩って、和みますよねぇ。」


「えー?なに、聞こえなE!」










13











突然振り出した雨が止むことはなく、大広間で筋トレという形になった。

筋トレとか、柔軟ね。


腹筋100を3セット、腕立て50を3セット、背筋50を3セット。

それで、30分の柔軟。


なぜ、私がジロー先輩の相手をしているかというと。

跡部先輩に、ジロー先輩が寝ないようにって私と一緒にやるよう命じたから。


ジロー先輩が90度に折り曲げた足の上に座り、ふくらはぎの裏を抱えるようにして、抑える。

時々、うー・・・と言って眠くなったのか、目をつむることもあるけど。


さっき言った約束のおかげで、ジロー先輩はなんとか意識を保ててる。








「はい、先輩、ラスト15。」


「腹いてー!」


「気のせいですよ。」


「愛がねー!」


「何言ってるんですか。ジロー先輩のこと、大好きですよー。」


「うっそー!まぢまぢー!?照れるC!!」


「はい、先輩、ラスト15。」


「うっしゃー!がんばっちゃうもんねー!」


「がんばっちゃってくださーい。」



「おっまえ、扱い慣れてんのなぁー。芥川の世話。」


「丸井くん!」


「あ、丸井さん。ジャッカルさん。もう、終わったんですか?」








ジロー先輩って、扱いやすいなぁ、と思っているところに

頭上から丸井さんとジャッカルさんの声がした。


終わったんですか、と聞くと。

んにゃー、あと腕立て伏せと柔軟だけ残ってる。

と言った。


・・・それなら、なんでわざわざこっち来たんだろう。

移動しなくても良いんじゃないのかな。








「丸井が、こっち来てやりたいって言い出してな。」


「・・・ジャッカルさんも、大変ですね。」


も俺と同じ、苦労人だよな・・・。」


「今度、苦労人の会でも開きますか。」


「そうだな・・・、じゃあ、こっちは柳生も呼んでくるぜ。」


「じゃあ、私は宍戸先輩ですかね。」








ハーァ、とため息を同時についていたら、丸井さんに何シンクロしてんだァ。と。

苦労人というか、ツイてない者同士、シンクロしてしまうんですよ。


そんなこんなしてるうちに、ジロー先輩はもう終わったらしく。

丸井くん丸井くんと、犬のように尻尾をふっていた(いや、尻尾ないんだけど。)

そんなジロー先輩を、ハイハイと適当にあしらってる。


・・・丸井さんも、ジロー先輩の扱い、慣れてると思うんですけど。








「あ、。芥川の腹筋メニューは終わったんだろぃ?」


「はい。終わりましたよ。」


「じゃあ、が芥川を手伝うことはもう何もねーよな?」


「まぁ、腕立ても背筋も終わらせましたからね。柔軟は手伝いますけど。」








丸井さんが、ニィと笑った。







「じゃあさ、いっちょ俺の背中の上に乗ってくれねー?」


「はい?」








* * *








「いーち、にーぃ、さーん、よーん、・・・丸井さん、重くないんですか。」


「ちょーど良いー、ぜーぃ。」


「それなら良いんですけど・・・。」


「妙技、高速腕立て伏せ!」


「っ!う、わうわうわうわ!!ちょ、丸井、さん!怖い!怖いですよ!はやい!」


「いぇーい、マネージャーさんと密着ー。」


「そっそういう問題じゃな、いです!こ、怖かったァ・・・。」








背中に乗れとは、どうやら私を腕立て伏せの重りにしたかったらしい。

レディにたいして、とっても失礼だと思ったけど。

まあ、マネジだし、選手のこういう世話も大切だよね、と思ったので。

しぶしぶ背中の上にまたがることにした。


だけど、丸井さんは、私の上に乗せて腕立て伏せをしているのに関わらず。

妙技とかなんとか言って、高速腕立て伏せをして、上に乗ってる私を怖がらせる。


それも、定期的に。


ジロー先輩は、寝ているし。

ちょ、何、寝てるんですか。

私が怒られたらどうするんですか。


ジャッカルさんを見習ってください。

隣でちゃんと腕立て伏せしているジャッカルさんを!








「ジャッカルさん、ジロー先輩を重りにして良いですよ。驚かせてしまえば良いですよ。」


「いや・・・さすがに、男を乗せるのはな。」


「ジャッカルもマネージャーさんを背中の上に乗せたいってよーぅ!」


「ば!ちげーよ、丸井!」


「私、丸井さんよりジャッカルさんを手伝いたいですけどね。」


「手厳しいな、おい!そんな奴にはこうだ!」


「ーっ!すいませんスイマセンすいませーん!怖い怖い!丸井さん、タンマ!タンマタンマ!」


「あー。やっぱ、女の子が練習に参加しているのって良いよなー。

 こーいう密着ハプニングって良いよなー。」


「ジャッカルさん、丸井さんを変態容疑で捕まえてください。って、すいませんすいません!」








丸井さんが、高速腕立てするたび、私は丸井さんの体にしがみつく。

てゆーか、からみつくってゆーか、ギューってな感じに。

私もいっちょまえの女の子なんで、こーゆーの、照れるんですけど。


そんなこんなで、ラスト1セットって時に。


悪魔の声がしました。








「ブン太さん、ズリーっすよー?何、やってんスかー。」


「・・・・うわー、もー、私、こんな状況を招いた丸井さんのこと、恨んじゃおうかな。」


。密着するなら、俺のとこじゃなきゃ駄目じゃん。」


「・・・いやー、密着24時ってわけでもなくて。

 私はただ、丸井さんの筋肉の元になってあげようかと「駄目じゃん?」


「・・・はい、そうですね。私が悪かったですね。

 息がかかるんですけど。近いんですけど。離れてほしいんですけど・・・!」


「オーイ。俺の背中の上で、イチャこくなよーぃ、赤也ー。

 お前も、マネージャーさんに乗ってもらえば良いじゃん。」








その声に、その提案に、笑ったのは。

あまりにも不運な私を笑う神様か、はたまた私の目の前に居る悪魔か。








* * *








「あのー。柔軟は、私、ジロー先輩の手伝う約束だったんですけど。」


「えー?まー良いじゃん。芥川さんも、ブン太さんとやって楽しそうだし。」


「・・・本当だ。」


、もうちょっと押しても良いぜー。」


「えっ、やわらかいんだね。」


「まーな。俺と遊ぶ気になったー?」


「ならないよ。どんだけ。てゆーか、いつもそうやって遊んでるの、女の子を。」


「俺の学校の女は、そーやって遊ばれるの望んでるんスよー。飽きるのも早いっての知っていながら。」


「・・・変な女の子たちなんだね。」


「俺としては、の方が変な女の部類だと思うけどー。ちょ、両足押さえて、俺の背中押して。足、浮く!」


「・・・。でもアレだね。赤也、ある意味かわいそうだね。

 え、てゆか、どうやって両手ふさがってるのに押すの。」


「上半身を俺の背中に密着させて、押す感じ?つーか、なんで、俺が可哀相なんだよ?」


「・・・こう?うわ、すごい!めっちゃ、前に倒れる!意外!

 ・・・あ、可哀相の理由だっけ?だって、赤也は恋愛の楽しさってのを知らないんでしょ。」


「意外だな。から、恋愛の楽しさとか言われるとは思わなかったぜ。恋愛とか、疎そう。」


「そりゃ、まぁ、否定しないけど。私の友達は、みんな、楽しそうでキラキラしてるよ。

 赤也に寄ってくるひとはキラキラしているんだろうけど、赤也に恋してるから。

 でも、赤也自身は楽しいっちゃー楽しいんだろうけど、恋の楽しさでは無いよね。」








私が、ぐーっと前に倒れながら、赤也の背中を押しながら、話すと、


恋ねぇ、俺って結構荒んだ恋愛ばっかしてるからねぇ。


と、赤也がつぶやいた。

荒んだ恋愛って・・・。

あんた、何歳だよ。








「赤也、10代の若者じゃないね。」


「ピッチピチの肌を見て何を言うんスか!」


「・・・荒んだ恋愛かぁ・・・。なんか、キラキラするぐらいの楽しい恋愛、出来ると良いね。」


「まー。最近見つけた獲物と居るのは、今までに無いくらい、楽しいけどな。」








グッと前に倒れた体を、ゆっくり起こし、

赤也が動くのだから、当然くっついていた私も起きた。


楽しそうに、赤也が言うから、


へぇ、よかったね。キラキラする恋愛になれば良いね。


って言うと、ワカメみたいな後頭部しか見えなかったのに

ニィっと笑った、赤也の顔になった。


しかも、超超近い。


赤也の瞳の中に、私がうつっているのが確認できるくらい。


冷静に、なに?と言うと

私の後頭部をいきなり掴まれ、もっと互いの距離が近づいた。








「最近見つけた獲物って、なんだけどー?俺、アンタにキラキラする恋愛しても良い?」








しばらく思考が停止した。


・・・え、これって、え、なに。


告白っていうよりも、宣戦布告?獲物報告?


マイフレンドちゃーん!

たすけて!なんだか、顔が熱くなっていくよ!

私だってクールガールじゃないんだから、照れるんだよ!こういうの!








赤也対日吉になりそう。
そんな話、むしょうに書きたいんですが。

書いても良いですか。

ちなみに、ボツになった13話(途中)
あまりに赤也が怖いので止めました。
見たいかたは、どうぞ→ 
ボツ13話