「…。」
「はい。」
「頑張れ。」
「…あ、やっぱ模試の結果悪かったですか。」
「思ったほど悪くはないが、期待していたほど良くもねぇ。
お前は今日からテストが終わるまで、放課後テスト勉強会だ!」
「えぇぇぇえええ。跡部先輩が面倒見てくれるんですかぁー?」
「俺じゃない。日吉は2年の中で成績一番良いからな。
彼氏にじっくり教わってこい。良いな、日吉。」
「わかりました。」
「か、彼氏って…、いや、そうなんですけど、え、日吉と?二人で?」
「そんなに俺様と一緒に勉強してーのか、あーん?」
「安心しろ、。勉強以外にお前に手を出さないようにはする。」
「もう危ないじゃん、その発言!」
ということで、日吉とのマンツーマン勉強会が始まります。
37.健全男子ならば仕方ない
勉強会の場所は、日吉の家、ということになった。
一応、か、彼氏の家に行くから、それなりに緊張は、する。
ていうか、してしまう。
彼氏の家に行くなんて初めてだからなぁ。
「別に私の家でも良かったじゃん。」
「のことだから、周りに何かあるほうが気が散るだろ。」
「わかってるね、さすが日吉。」
「俺の部屋には、ベッドと机とタンス以外はねーからな。丁度良い。」
「…意外。日吉、ベッド派なんだ。」
「ねぇ、日吉ー。」
「なんだ。」
「重くなーいー?」
「…思ったほど軽くもないが、これくらいは余裕だ。」
「そこは、軽いって言いなさいよ…。」
「嘘は苦手でな。」
「いじわる。」
9月特有の残暑が落ち着いて、秋が近づいてくる風が吹く。
私は放課後に日吉の家に行くと思わなかったため、
変わらず自転車通学をしていた。
だけど、突然跡部先輩から日吉と勉強会しろという通達されたので
自転車をどうしようかと思っていたら、日吉が、乗せてやる、と一言。
いわゆる、彼氏と2ケツっていうの、体験しちゃってます。
ゆずの夏空みたいーなんて、思いながら、
日吉の身体にまきついている腕に力を込める。
2ケツの後ろって、結構怖い。
そんな、感じ。
「なんかさー、らぶらぶみたいだねー。」
「…これくらい、友人同士でもやるんじゃないのか。」
「あ、そういえばさー、日吉と友達の時、一回だけ2ケツしたよねー!」
「あぁ。あの時、お前にたかられたくなかったから自転車通学は止めたんだ。」
「やっぱりー?」
「だが、。」
「んー?」
「あの時と、今では、関係が違う。」
「そーだねー。」
「…手は出さないようにはする、とは言ったが
家に着く前に、こうもお前と密着すると、危ないかもしれない。」
「…え。」
「もし、そういうことになりそうで、が嫌だったら、
ちゃんと、俺を全力で拒否れよ。」
「どうしよう、日吉。そんなこと言われたら、私、日吉の家行きたくない。」
「…正直な奴だな。」
* * *
ここだ、と言われて日吉の背中から見た家は、
日吉道場とかかれた板がよく似合う、純和風な家だった。
私、こんな家、映画とかドラマでしか見たことないよ。
門から、玄関までの道のりが長い。池に、獅子脅しがある。
道になっている大きな岩っぽいところ以外は砂になっていて、
その砂に、水の波紋みたいな模様まである。
あ、日吉もお金持ち校氷帝の生徒だったな、って、今思った。
玄関に着くまでに、道着を着た若い男の人たちを見た。
日吉を見ると、挨拶をしていた。
なんだか、熊みたいに身体が大きい人たちばかりだったから、
ちょっと怖くなって、離れないように、日吉の手をギュッと握った。
玄関に着き、おじゃまします、って言おうとしたら
うるさい奴が来るから、そっと靴を脱いで、俺についてこい
と、言った。
彼女としては、初めて彼氏の家に来たんだから、お母さんとかお父さんに挨拶したいんだけどな。
日吉があまりに真剣な顔でいうから、思わず頷いてしまった。
階段を上り、日吉が開けてくれた部屋へと進む。
部屋に入り、日吉がドアを閉めたことを確認すると、やっと緊張が解けた。
「あー緊張した…。」
「、もう手を離していいか。」
「あ、ごめん。」
「なにか、嫌なもんでも見たのか?」
「ううん。迷子になりそうだったから。」
「そうか。適当に座れ。今、クーラーをつける。
あと茶を持ってきてやる。麦茶で良いか?」
「うん、ありがとう。」
バタン、とドアが閉まる。
日吉の部屋って畳かと思ったら、意外と普通の部屋なんだな。
しっかし、なんにもないな。
生活用具しかないし、ゲーム機もない。
日吉って、ここでどうやって1日を過ごしてるんだろう。
「あ、エロ本、あるのかな。」
思いついたかのように、口に出した。
そうだよ、がっくん先輩と忍足先輩に言われたじゃん。
エロ本の嗜好を見て、どん引きして自分に出来そうになかったら別れたほうが身のためだ、って。
まぁ、日吉にかぎって、ロリコンとかSM好きとか、そういうの無いと思うけど。
やっぱり、ベッドの下が王道かな?
「熟女とか好きだったら、どうしよう…。」
「熟女は好きじゃない。」
「よかったぁ…て、あ、あははは…日吉さん、持ってくるの早いねぇ。」
「そうでもない。…で、変な本でも探してたのか?」
「だ、だって、日吉の嗜好って気になるじゃん。その、彼女として。」
「っお、俺は普通だ!ふつう!」
ちょっとだけ顔を真っ赤にして
普通と言った、日吉が可愛かったです。
* * *
「は、英語は得意なのか。」
「英語は感覚で出来るじゃん。あと、国語とか。」
「根っからの文系ということか。数学は…破滅的だな。」
「日吉センセー、生徒の心を労わってくださーい。」
「何が分からないのか、分からないってのがな。終わってる。」
「終わってるって…あ、日吉。ご褒美っていうかなんかそういうの作ってよ。
私単純だから、きっと頑張るやる気が出るかもしれない!」
そう言うと、日吉は、ご褒美か…と真面目に悩みだした。
てっきり、誰がご褒美なんてやるかアホ、って言うかと思ってたけど。
「何か欲しいものあるか?」
「ない。」
なら駄目じゃねーか、と笑う日吉。
日吉がちゃんと笑う顔って初めて見た気がして、ちょっとドキッとした。
ぽーっとしてると、笑う日吉と目が合った。
なぜか動けなくて、しばらく見つめあってると、日吉の手が私の頬に触り、顔と顔が近づく。
あ、日吉ってば了承を得てない
そう思ったけれど、目をつむり、私は日吉を受け入れた。
そんな、感じ。
ちょっと甘くなりました。最近糖分に飢えてて…orz

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