「ん・・・。」


「起きろー、起きなきゃチューしちゃうぞー。」


「・・・・んん・・・まだ寝る・・・・・・・ん・・・?」


「あ、起きた。おはよーう。」


「っキァァァァアアアア!!」










17











「だーかーらー。俺は、何もしてないって。起こしに来ただけー。」


「起こしにこなくたって、私は一人で起きれる!」


「だって、鍵開いてたんだもんよ。アレって誘ってるのかと思うじゃん。」


「鍵開いてたからって、人の布団の横に寝っころがる!?」


「布団の中に入ろうとしたけど、入ったら、さすがに我慢できなくなんねーから止めた。」


「そこは理性があったんだね・・・。」


「かわいー寝顔してたぜ?」


「っ人の寝顔は勝手に見るもんじゃありません!」


「思わず、写メしちゃったもんよ。見る?」


「見ないよ!なんで自分の寝顔の写メ見なきゃいけないの!」


「まーまー、俺の寝顔の写メ見せてあげるからー。」


「いらないよ!」








みなさま、おはようございます。

ついに、ついに、合宿最終日になりました。

合宿最終日の朝から、目覚めたら目の前に赤也の顔があったのは

とっても嫌な目覚めでしたけど。

熱のダルさは、あまり感じられないし。

最終日も、頑張ろうと思います。








* * *








「練習試合ですか。まぁ、妥当といえば、妥当ですね。」


「午前中は、アップと、練習。午後は、練習試合。良いだろう、跡部?」


「良いも何も、合宿だぜ?そういうもんだろ。」


「うむ。メンバー表も昼食の刻までに、決めておけ。

 俺達と善戦できるような順番を考えておくんだな。」


「ッハ。それは、こっちのセリフだろう?あーん?」



「(真田さんも跡部先輩も、楽しそうだなぁ・・・。)」


ちゃんは、審判できるの?」


「え、えー・・・と「ああ、できねーよ。まだ教えていねぇ。」


「そっか。じゃあ、疲れた選手の処置を頼むね。」


「・・・審判、できなくて、すいません。」


「大丈夫。気にしないで?アイシングしてもらうだけでも、俺達は助かるんだから。」


「・・・はい。」







そんな言葉に甘えちゃいけない。

幸村さんの優しい言葉に甘えちゃいけない。


家に帰ったら、マニュアルを買おう。

ちゃんと、覚えよう。

誰かが教えてくれるのを待つんじゃない。


役にたつんだ、絶対。








「ということで、勝ったらちゃんを俺達のマネージャーにしても良いかな?」


「・・・・は?」

「・・・・・・え?」


「ふむ。それは良い考えだな、幸村。」







をマネージャーにすれば、赤也も仁王も毎日練習に来るだろう!

うむ、たまらん考えだな!



真っ白になる、頭の中で

真田さんの、うきうきした声と

幸村さんの、にこにこした顔が

焼きついて離れなかった。



隣に居た跡部先輩までも、思考停止しているようだ。


あまりに、突然すぎて。


結構反応の薄いほうだと思う、私と跡部先輩を

同時に思考停止させるなんて


立海大はやっぱり、凄い学校だと思う。








* * *








「うーーん。そりゃ、負けらんねぇーな!」


「なんや、負けるつもりだったん?岳人。」


「まっさか。はなっから勝つ気に居るに決まってんだろ!」


「幸村さんも、突然な人ですね。」


「この試合負けたら、を無くすということになるんだね。」


「負けらんないC!」


「そうですね!さんは、もう、立派な正マネですし!」


「ばーか、長太郎。そこは、俺達の仲間同然って言うところだろ。」


「・・・誰が渡すかよ・・・。」


「なんや、一番燃えとるん、日吉やん。」


「当然でしょう。を立海大のマネージャーになんて、させません。」


「ていうか、絶対、勝ってくださいよ。

 私、幸村さんたちのこと、好きですが、ここでマネージャーしたいです。」







そう言うと皆、何も言わず、一人ずつ私の頭をポンとたたいて


ぜってー勝つぞ!


と、円陣を組んでた。


だって、立海のマネジになったら・・・。

私、赤也と仁王さんの世話ができるほど、人間できてないもん。

絶対に、過労で倒れちゃう。相手しすぎて。




まぁ、それだけじゃないけど。








「・・・何、見てんだよ。」


「べーつにー。」








相変わらず、目を合わせてくれない日吉を見て、少し笑った。








* * *








「っさー!ばっちこーい。」


、あのな、野球じゃねーんだからな・・・。」


「宍戸先輩。コートの向こうは戦場ですよ。」


「コートに入ってすらねーのに、お前はすでに戦闘態勢だな。」







ぱこーんぱこーんと、すでに練習している立海大を前に

両手を腰に当て、仁王立ちする。

隣には、指先でラケットと戯れる宍戸先輩。

少し、呆れ顔だ。








「お前も災難だよなー。不運っていうか、なんつーか。」


「そうですね。」


「跡部には、日吉と仲良くしていたがためだけに信頼ある奴だと思われ半強制的に入部させられ。」


「まぁ、実際、日吉と仲良くしている女子は私ぐらいなんですけどね。」


「入部して、やっと仕事に慣れてきたと思ったら、なんだかしらねぇが、仁王たちに気に入られ。」


「それが人生最大の不運だと思っています。」


「で、今のこの状況。慣れてきたと思った矢先、

 違う学校のマネージャーにされそうになってる、ときた。」







私の方を向かず、宍戸先輩は言う。






「最近ずっと不運だろーけど、最後の不運だけは、なんとかしてやるぜ。」


「あったりまえじゃないですか。私は、氷帝学園高等部の生徒です。立海大には通えません。」


「・・・かわいくねーな。登校の問題かよ。」


「こんな可愛くない私ですけど、立海大に転校させないでくださいね。」


「あたりめーだろ。」








* * *








さァーと、風で葉が揺れる。

こんな爽やかな空間に、何故、俺とコイツとの空気は味が悪いのだろう。

目の前に居る、黒モジャの悪魔は、笑って俺にこう言った。







「この練習試合、ただの練習試合だと思わない方が良いんじゃねーの?」


が賭けの対象になっていることか。」


「そ。が居れば、俺と仁王先輩は毎日でも部活行くだろうと考えたんだろうな。」


「たとえ、が賭けの対象になっていようが、いまいが、俺達は、勝つ。」


「・・・へぇ?そりゃー、楽しみじゃないスか。」







黒モジャの悪魔は、だんだんと瞳の色を変え、にんまりと笑った。


真っ暗で真っ黒の闇のような黒から、

抑えきれない興奮を表すような赤へと。