やん。もう、大丈夫・・・じゃあらへんか。」


「顔を見るなり、大丈夫じゃないとか不吉なこと言わないでください。」


「せやかて、お前、冷えピタつけとるやん。

 そんな子が大丈夫じゃないわけあらへんやろ。」


「大丈夫じゃないわけあらへんやろって、それって大丈夫になってませんか?」



「・・・大丈夫、ではない、なわけがない。

 ・・・大丈夫ではないの時点で、大丈夫じゃなくて、なわけがないやと、

 ・・・ほんまや、大丈夫になっとる・・・?や、ちゃうやん、えーとな、もういっかい、いこか。」



「あっ、日吉!」


「お、おう、よう、。無事なのか。」


「うん。日吉が看病してくれたんだって?ありがとう。」


「た、たいしたこと無い。気にするな。」


「・・・なんで、目合わして話さないの?」


「・・・・そんなことない。」


「ほら、目ぇ泳いでるじゃん。どうしたの?」


「・・・・あー・・・跡部部長!ちょっと、お話したいことが。」








ありえない。

日吉の目が、あんな泳いだところ、見たこと無い。

てゆーか、目を合わせない日吉なんて、知らない。

だってさ、日吉ってさ、人を射抜くような目で話すじゃん。

私、最初、殺されるって思ったもん。

これ、日吉の第一印象。








「・・・変な、日吉。」











16










ジジジジジジジジ




「と。言うわけなんだよ。・・・変だよね、日吉。どう思う?」


「うーん、確かに、変だね。でも、俺と話すときは普通だったよ?」


「うん、見た。鳳くんと話しているとき、普通の無愛想な日吉だったよね。」


「(普通が無愛想な日吉なんだ・・・)」


「やっぱり、私が何かしたのかな・・・あ、落ちた。あーぁ。線香花火でさえ私を批判しているよ。」


「か、考えすぎだよ、さん!ほら、俺の線香花火は頑張ってるから!」




ジジジジジジジジ・・・・ポト




「あ、落ちた。」「・・・・やっぱり批判してるよ、線香花火でさえも。」








夕飯のときに、ひょっこりと顔を食堂に出すと。

みんな、大丈夫?と声をかけてくれた。

跡部先輩や、滝先輩の言うとおり。


私を必要の無い人間として見ている人は、誰一人としていなかった。


体力つけよう。

次の合宿に備えて。疲労で熱なんて、だっさいことにならないように。




そして、夕飯のときでさえ。

日吉は、私と一回も目を合わせなかった。話しかけることさえ無かった。

それは、誰も気づかない、私の中だけの異変。


考えてみたら、私が日吉と話さない1日なんて無かった。

小さいようで、かなり大きい異変。少し、寂しい…。



夕飯が終わったあと、丸井さんやジロー先輩、がっくん先輩が、

もう花火したいと言い出し始めて。

だから、少し早く花火大会が始まった。

食べた後、直ぐなんてキツイですよって言おうとしたけど

がっくん先輩とジロー先輩が、

がまた体調崩して、一緒に花火出来ねーの、嫌だもんなー!

って言っていて。


ちょっと、嬉しかった。




跡部先輩が用意してくれた、たくさんの花火の周りに、みんな群がる。




日吉は線香花火を好きだったから、線香花火の束を取って

ハイ、と日吉に渡したら。

また、目をそらして、俺はネズミ花火をするから、と言った。





・・・・変。

日吉が、あんなクルクル回る嫌がらせの塊のようなネズミ花火をやるなんて。

日吉は蛇花火と線香花火がすきだって言ってたじゃん。

ネズミ花火・・・丸井さんやジロー先輩、がっくん先輩や仁王さん、宍戸先輩、赤也がやりそうなのに。

その中で、日吉も混じってやってるなんて想像できる?

日吉が、そんな年相応な遊びするとは思えない・・・。


やっぱり、日吉、どうしちゃったんだろうか。



それで私は、鳳くんに相談しているってわけです。








「なんか、変な寝言でも言ったのかな。

 私、意外と寝相ひどくて、看病する日吉のことを蹴っちゃったとか。」


「怒ってるわけじゃないと思うけどなぁ。」



「日吉がに後ろめたいことをしてしまった可能性8割だな。」



「やっ・・・柳さん・・・。ちょ、懐中電灯を顔の下に持ってくるとか、

 驚かせないでくださいよ。怖いんですよ。リアルで!」


「で、後ろめたいことって・・・たとえば、なんですか?」


「さあな。接吻とか、そのようなものをしたのではないか。」


「せっ・・・接吻・・・!?

 質問、接吻って、なんですか。」


「驚いたわりには、知らないんだね・・・。」


「接吻とは、相手の唇や頬などに自分の唇をつけ、愛情や尊敬の気持ちなどを表すこと。

 またの名を、口付け。我々がよく耳にする言葉にすると、キスだ。」








冷静に説明してくれた柳さんの言葉を、もう1回、私の脳内で繰り返す。


接吻とは、相手の唇やほおなどに自分の唇をつけ、愛情や尊敬の気持ちなどを表すこと。

またの名を、口付け。

我々がよく耳にする言葉にすると、








「キッ・・・キス・・・!?」




「まさかー。それは、言いすぎですよ。日吉が、そんなことするわけないですよ。」


「まぁ、これは、あくまで俺のなかの予想に過ぎない。」


「そ、そうですよ。あの、お堅い日吉が・・・ねぇ。赤也や仁王さんじゃあるまいし。」


「そうそう。きっと、寝てる間にさんの部屋を片付けて変なもの見つけたとかじゃないかな。」



「私、合宿所にエロ本持ってこないんだけど。てゆーか、私の部屋、汚くないんだけど!」



「仮に、が卑猥な本を持ってきたとして、それが日吉に見つかったとして。

 日吉なら、目をそらすというより、ますます呆れるだけだと思うがな。」



「いやいや、私、エロ本とか持ってないんですけど。」



「そうですね。さんが、いかがわしい本を持ってきたとして、

  日吉が見つけたとしても、呆れるだけですね。」



「ねぇ、何、その私がエロ本持ってきてる説で納得してんの。持ってないからね。

 しかもなんか、エロ本って言ってる自分が恥ずかしくなってきた・・・。
 
 私も、卑猥な本って呼ぶことにしよう・・・。」



「とにかく、あの日吉らしからぬ行動、俺にとっても謎であり興味対象ではある。」


「それって、つまり・・・。」


「もう少し、データを分析するということだ。この合宿が終わるまで・・・
 
 明確に言えば、明日の夕方までにな。」











フッと笑って、柳さんは立ち上がり、闇に溶けていった。

なんだか、柳さんの予想にもてあそばれた気がする。

考えてみれば、日吉が無抵抗な人間にどうこうする性格なわけないもんね。

それに、私と日吉は、友達だもん。

・・・・そうだよね。

なんだか、考えてるのがくだらなくなってきた。

日吉が話しかけてこないのだって、そんなに理由は無いはず。

あったとしても、時が経てば、普通になるだろう。

それに、1日話してないからって何で、私ってば・・・・こんなに問題にしたんだろう。

なんで、1日話してないだけで、私、こんなに気になったんだろう。



まぁ・・・良いか。









「良いや、鳳くん。多分、日吉が私を避けてたのだって、なんとなくの偶然だよ。」


「そう?まぁ、さんが言うなら、俺もそこまで気にしないけど。」


「それよりさっ。花火を楽しもう!あれやりたい、あれ!鳳くん!」








日吉に嫌われたっていう発想だけは、どうしてもしたくなくて。

私は、その考えを隠すように、気にしないことにした。








* * *








「赤也。花火3本は持ちすぎだと思うんだけど。」


「多ければ多いほうが良いんだぜ。それだけ派手だしな!」


「それだけ危険なんだけど・・・。」


。ほれほれ蛇花火じゃ。」


「私、蛇花火、別に好きじゃないんですけど。なんですか、そのイメージ。」






バチバチバチバチバチッッ





「うわっ!ちょっ、ちょ、がっくん先輩ー!

 ねずみ花火は人に向けちゃいけません!」


「やべー!を驚かせるつもりが、切原の野郎、喜ばせちまった!」


「向日さん・・・グッジョブ!」


「何やっとんねん!切原、めっちゃイイ顔しとるやん!」


「だって、が切原の腕にしがみつくとは思わなかったんだよ!」


「・・・左側に居れば良かったのう・・・。」



「わ、私だって、あんたの腕だと思わなかったら、すがらなかったよ。誰が、赤也の腕に・・・!」



「・・・へぇ?そんな可愛くないこと言っても良いんスかぁ?」


「・・・・いやぁ、今日はパーっと騒ぎましょうか、がっくん先輩。忍足先輩。」


「居ねーけど?」






…ほんとだー。







「あっちで違う遊びしてる!直ぐに違うおもちゃ見つけた子供か!って近い近い、ごめんなさい!」


「何やっとんじゃ、赤也。こいつは、俺の獲物じゃ言うとる。」


「えー。じゃあ、二人で共用でもします?3Pと「ああああああ!何言ってるのかなー!」


「嫌じゃ。俺、にはマニアックなことしたいんじゃ。」


「えー。仁王先輩の、マニアックとか、参加したいような参加したくないような。」


「意外とハマルぜよ。特に、赤也はハマルと思うがの。」


「えー。ほんとですかー?じゃ、今夜詳しく聞かせてくださいねー?」


「何も聞こえない何も聞こえないナニモキコエナイ」


「あ、お前も聞くだろ?今後の参考のために。」


「何の参考だよ!」








・・・どうしてかな

会って2日の人たちに、セクハラされまくってるんだけど


・・・訴えても良いのかな




あーぁ。明日は、日吉と話せたら良いのに。








仁王さんのマニアックプレイは、仁王さん独自の嗜好によるものであろうね