「それ、私のです。丸井さん、返してください!」
「えー、もう食っちゃったぜぃ。」
「〜っ!跡部先輩、それ、ください。」
「俺様がやると思うか。」
「ケチ。」
「丸井、のおかず、どんどん取っていいぜ。俺が許す。」
「あー!丸井さん、本当に取ってるし!!」
「、俺のやるぜよ。」
「まじっすか。」
「ただし、口移しじゃが。」
「えええ遠慮しときます。いいですいいです。いりません。」
なんで、私の隣の席は跡部先輩なんだろう。
なんで、私の隣の席が仁王さんなんだろう。
なんで、私の前の席に丸井さんが居るんだろう。
・・・・あれっ、ここ、デスパレードじゃね?
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10
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「跡部先輩。私、日吉と鳳くんと樺地くんのところにいきたいです。
安全圏に行きたいです。なんで、私がここの席なんでしょうか。」
「知らねぇ。仁王と丸井に聞けよ。お前がここに来るまでに、もうすでに席は取ってあったぜ。」
「そうそう。俺と仁王が、名札つきで席指定しといた。」
「・・・・そんな席指定しなくても、いいじゃないですか・・・。」
「良いじゃん、良いじゃん。どうせ、俺ら他校はあまり会えないんだし。」
「・・・それもそうですね。じゃ、日吉のところ行ってきます。」
「おーい!?さっそく否定するなよぃ・・・。はい、仁王、捕獲!」
「了解じゃ。」
「いいです、いいです。席につきますから、仁王さん、来ないでください。」
「・・・なんで、そんな嫌がるんじゃ。」
「必要以上に密着が嫌いなんです。」
「たとえ、俺からでもかのう?」
「(そういう切ない表情は鳳くんの方が似合いますよ。言わないけど。)
え、別に、誰でも嫌がりますよ。」
ケロっとそう言うと、仁王さんの切なめな表情が急変し
そうか、とまた目を細めて笑った。
・・・こわっ!
私、そんなに面白いことしてないんだけど。
丸井さん、そんな笑わないでください。
ていうか、そんな丸井さんの隣で黙々食べている柳さんに私は胸キュンです。
あれ、趣味おかしいですか。
いいえ、動じない人に胸キュンするんです。
私も柳さんに習って、黙々とご飯を食べた。
そう。たとえ、隣で仁王さんが無意味に肩を組んできても。
そう。たとえ、丸井さんが私のおかずをバレバレなのに隠して取っていても。
そう。たとえ、仁王さんのイスがだんだん私の方に近づいてきても。
私は、動じず黙々と食べた。・・・いえ、早々と食べた。
「・・・あ。」
「なんだよ、なんか忘れ物でもしたか。」
「いえ・・・。ちょっと、思ったことがあって。やってもいいですか。」
「好きにしろ、俺に迷惑かからねー程度にな。」
跡部先輩の方に向かって聞いたら、跡部先輩はこっちを向かず答えたので。
私は、思ったことをやるために、跡部先輩の肩をたたき、こっちに顔を向けてもらった。
そして、箸でご飯を取り、こぼれないように箸の下に手を置き、跡部先輩の口元へ。
「、跡部先輩の真似します。・・・あーん?」
真顔で、跡部先輩に言った。
・・・タイミング悪く静かなときに言ったため、私の声は響いた。
私がやりたかったこととは、アーン。
だって、跡部先輩、いつもアーンアーン言ってるじゃん。
それがさ、どうも、仲睦まじいカレカノの、はいアーンして、に聞こえるんだよね。
「すいません、自分でやっといてなんですが、爆笑して良いですか。」
「・・・てめぇ・・・。」
「ブッハ!ギャハハハ!やべーやべー!ちゃん最高だC!アーンって!」
「俺らがいつも思ってたけど口に出せなかったことを、簡単に言ったな、アイツ。」
「宍戸さん、笑うなら笑ったほうが良いですよ。」
「跡部、ええやん!アーン!自分もアーンやねんし、アーンしたれや!」
「ー!そのままアーンしてやれー!アーンに!」
「・・・、俺を見るな。自分がやったことに、助けを俺に求めるな。」
「プーッ!アーンしてもらって羨ましいぜぃ、跡部ー!お前、お前・・・!笑って良いか、俺ー!」
「良いのう、は。ほんと、見てるのが飽きないぜよ。」
「つーか、跡部さんの次は俺にアーンしてねー!」
「こら、赤也!食事中に身を乗り出すのではない!」
「ふふっ、久しぶりににぎやかな食卓だね。」
「これ、にぎやかっていうのか、幸村。これは賑やかの範囲なのか。」
「ごちそうさまでした。・・・っふ、予測どおりの時間に食べ終わったな。」
多種多様な反応、ありがとうございます。
ていうか、立海って本当、マイペースな人が多いよね。
あの、柳さん。
こんな騒ぎの中、予測どおりにごちそうさまを言って満足している様子のあなたが
一番、胸キュンです。日吉なみに動じないよ、このひと!
「跡部先輩、失礼しました。やりたかったことは終わりました。」
「俺に迷惑かけねー程度にな、と言っておいたはずだが。」
「え、迷惑でしたか。いいじゃないですか、笑えましたし。」
「・・・、お前って冗談言うときは冗談っぽくやれよな・・・。」
「失礼ですよ、私は常時冗談言っています。」
「それもどうかと思うがな!」
ヒクヒクと口角を震わせたあと、跡部先輩は私の手首を持って
箸の先にあるおかずを、食べた。
冷めているものは食べねぇ!というなんとも理不尽な先輩が、
もう冷めているだろうおかずを、食べた?
ていうか、これ、これ・・・・!
「ああああ跡部先輩・・・・!」
「ッハ、照れて「私のおかず食べましたね!こうなったら、先輩のおかず全部もらいます!」
「そこかよ!そこに反応かよ!つーかお前の食いかけのちんけなおかずと、
俺様のシェフ特別製のおかず全部だとフェアじゃねぇ!」
「ていうかなんで跡部先輩のだけおかずがちょっと違うんですか!不公平だ!」
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