「ジャッカルさん、すいません。柳生さんも・・・。」
「良いって、さっきから謝ってばっかりじゃねーか。」
「そうですよ。別荘に戻るのは同じなのですから、このぐらいの荷物、気になさらないでください。」
「ありがとうございます、本当。練習終わって疲れているのに。」
乾いた洗濯物を取り込んで、カゴを2つばかし重ねて持っていると
ジャッカルさんと柳生さんが手伝ってくれました。
洗濯物が歩いてるかと思ったぜ、大丈夫か?
前が見えてないようですね、手伝います。
そんな優しい一言のおかげで、私は、一括で大量の洗濯物を運ぶことが出来ています。
申し訳ないけど、やっぱり助かったし、嬉しいです。
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「本当に、ありがとうございました!もう、説明受けているでしょうけど、
この後お風呂入って、それから夕食になります。ゆっくり休んでくださいね。」
「あぁ、やーっと夕飯かー。」
「さん、その量をお一人でたたむのですか?私も手伝いましょうか。」
「大丈夫です。マネジですから。ゆっくり疲れを取ってきてください。」
「・・・では、お言葉に甘えて。それでは、また。」
柳生さんは、頭をペコリと下げてジャッカルさんと自室へ向かった。
うーん、本当、いい人だなぁ。
柳生さんは紳士って口調だし雰囲気も紳士だけど、
ジャッカルさんは面倒見の良いお兄ちゃんってトコかな。
そんな分析をしながら、イスに座り、洗濯物をたたんでいく。
お日様の光のせいで、少し暖かい。
やっぱり、外干しにかぎるね。
「おい、。」
「あ、跡部先輩。どうしましたか。」
「風呂の時間のことでな。・・・洗濯物か、お疲れだったな。今日は。疲れたか?」
「大丈夫ですよ。合宿と聞いたときは、家事を全般やるのかと思ってましたけど。
跡部先輩の配慮のおかげで、気が楽でしたし。」
「そうか。あぁ、風呂なんだけどな。お前、今入るか?」
「洗濯物が、たたみ終わり次第ですが。そのつもりでしたけど?」
「そうか。それなら、一人、護衛でもつけとけ。」
そう言って、跡部先輩は、私の隣のイスを引いて
足を組んで、腕を組んで、座りだした。
つまりはいつもの、跡部様スタイル(by忍足先輩)
「ていうか、護衛?どうしてですか、物騒ですね。」
「女風呂は、有るっちゃー有るんだが、長く使ってねーから鍵が開きやすいんだよ。」
「え、そんな長く使ってないんですか。跡部先輩、この別荘、私用に使ってたりしなかったんですか。」
「ッハ。使ってるに決まってるだろ、女と一緒とか。ま、俺様が若い時だけどな。」
「(今も若いじゃん。)じゃあ、彼女とか女風呂使わなかったんですか。」
「アーン?決まってるだろ、一緒に入「すいません、生々しいです。ていうか、キモイ!」
「・・・まぁ、とにかく、にとっても鍵が壊れてちゃ不安要素が出るだろう。」
「・・・そうですかね。大丈夫じゃないですか、先輩たち、悪ふざけはしても、そこまで・・・。」
「お前、他校に心当たりねーのか。不安要素の心当たりは。」
・・・・・あるじゃん!
ついさっき、真昼間に堂々と破廉恥用語を繰り出した男が居るじゃん!
しかも会って早々、部屋に連れ込もうとした男も居るじゃん!
ぜんぜん不安要素あるじゃないかぁぁぁあ!
え、だめじゃん、だめじゃん。これ、危険ってやつ?
さっき、私、身の危険を感じるって、自意識過剰かもしれないけど、って言ったよね!
・・・これ、やばくね?
「ありました、ありました!不安要素!助けてください、跡部先輩!」
「俺様を護衛にしようなんざ100万年はえぇ!」
「じゃあ、樺地くん呼んできます!彼なら立派に果たしてくれます!」
「樺地は先に風呂に行かした。疲れているだろうからな。ゆっくり疲れを取るためだ。」
「あんた、何でこんなときだけ樺地くんを労わってるんですかぁ!」
「俺をいつも労わってるだろうが!日吉とか、鳳とか、宍戸とか、滝とか、頼れる奴は居るだろ。」
「そこに、ジロー先輩やがっくん先輩や忍足先輩は、いれないんですね。」
「お前、あいつらがとは言え女の風呂を覗かないとでも思ったか。」
「なんですか、とは言えって。・・・悪ふざけ、というより、悪ノリしそうです。」
* * *
「っていう、わけなんだよ、日吉。」
「そこで、俺がお前の護衛に抜擢されたというわけか。風呂の帰りに。
選手の俺が、ゆっくり休む間もなく。」
「ご、ごめんって。でも、鳳くんはすごい張り切ってくれてるよ。」
「日吉!さんの身を守ろう!ね!」
「・・・こいつは、正義感ってやつが高すぎるんだよ・・・。」
とりあえず、誰か誰か、と思っていると、日吉と鳳くんが目の前を歩いていたので。
捕獲しました。やりましたよ、跡部先輩!
負のオーラをかもしだしている、日吉に一通り説明すると、眉を寄せつつも渋々承諾。
わかっていますよ、日吉くん。君が文句言いつつも優しい人だってことぐらい。
鳳くんは、さんを危険な目に遭わせるわけには行かないよ!って。
ゴレンジャーもビックリな、キラキラした目で私の手を握って、言った。
俺、絶対にさんを守るからね!
・・・・ちょ、これ、わざと?鳳くんって、天然ジョーカー?
そんなこと言われたら、顔が熱くなるよ!
「じゃあ、入ってくるね。お願いします、二人とも。まぁ、何事も無いだろうけど。」
「さっさと入ってこい。そして、俺を早く休ませろ。」
「わかったわかった。じゃあ、スパーって身体洗ってくるよ。」
「さん、ここは任せて、安心して湯船に浸かってきなね。」
「ありがとう、鳳くん。あ、湯冷めしないでね。
それで風邪引かれたら、私、罪悪感に押しつぶされちゃう。」
「大丈夫だ。もう、髪は乾いてるしな。鳳もな。」
風呂場の入り口で、壁に寄りかかるようにして座る日吉と、鳳くん。
髪は乾いてるという日吉の頭が、座っていることで私より低い位置にある。
だから、思わず頭を撫でてみると、日吉に怒られた。・・・なんで。
このまま怒られるのも、日吉や鳳くんを湯冷めさせるのは嫌なので、
私は逃げるように風呂場へ入った。
* * *
「・・・ねぇ、日吉。」
「なんだよ。」
「護衛ってのは、分かってるけど。近くで、女の子が入ってるって思うと、なんか、ドキドキしない?」
「っするか!」
「えー、ウソだー。だって、シャワーの音とか、リアルに聞こえてくるしさ。
身体洗ってるのかなぁ、とか思わない?」
「思わねー。」
「・・・日吉って、ムッツリ。健康な男子なら誰もが思うよ。照れないでー、日吉。」
「・・・鳳、殴るぞ。」
「うわっ。本気で怒ってるし!ごめんごめん!」
鳳が、冗談で言ってるのかは分からねーけど。
そう言われると、無駄に意識してしまう。
確かに言われてみれば、シャワーの音や、
水が流れる音、バシャバシャはしゃぐ音(バシャバシャ・・・?風呂で?)
すべてが生々しく聞こえて、不覚にも、俺はが入ってることに、無性にもドキドキしてしまった。
心臓がバクバクと言う。
想像してしまう自分が、甚だしくて仕方ねぇ!
熱くなっていく顔を、右手で押さえる。・・・いや、抑える。
が、俺を信頼して護衛役にしたというのに、何をやってんだ、俺は。
俺が一人で悶々としていると、がスッキリしたーと言って出てきた。
テニスのジャージではなく、少し前までマネジ業していた、ただのジャージ姿。
でも、いつもと違く見えたのは、お風呂に入ってきてたことで赤くなった頬のせいか、
トロンとした目のせいか。
なぜか、どこか艶めかしいとさえも思う、。
俺は、また一人勝手に心臓をバクバク言わせていた。
ちくしょう。
元凶は、鳳だ。ぜってー鳳だ。完璧に、鳳だ。・・・覚えてろ。

少しずつ意識してきたかな。
ていうか、そういう感情はしょうがないよ、日吉。だって健康優良児だったら、ねぇ。
ところで、跡部先輩の若きころという生々しさ。一緒に入るんかいぃぃい!
でも、跡部先輩は、きっと彼女を彼女と思ってない。だから、別になんとも思ってない。
・・・ひどいな。自分で言っといて何だけどw
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