「洗濯物、しゅーりょーう!」








長い干し竿につるされている、選手たちの練習着が揺れる。

陽がさっきより傾いているけど、夕方までには乾くだろう。


それほど、もう9月というのに、気温は暑い。


コートから、少し離れた森林近くを洗濯干し場に決めたのは

洗剤の匂いだけじゃなくて、森林の匂いも移れば良いのにな、と思ったから。

まぁ、私がここで森林浴したいと思ったからのも有るのだけど。








「さて、そろそろ休憩時間だ。戻らなきゃ。」








空になったカゴを持って、テニスコートへ向かった。

























「あ、、おかえり。」


「滝先輩。すいません、もう休憩時間だったのですか。」


「大丈夫だよ、クーラーボックスに入っていたでしょ?

 みんな、それぞれ勝手に取っちゃって、ごめんね。」


「いえ。すいませんでした、遅れて。」


「それ。」


「へ・・・?」








戻ってみると、もう休憩時間だったらしく、みんなドリンク片手に座っていた。


おかえり、と言ってくれた滝先輩に謝ると、ソレ、と持っているカゴを指差された。








「洗濯、ありがとうね。学校には乾燥機があったけど、ここには無いから。

 洗濯物干し場を行き来してくれたんだよね?お疲れさま、。」


「・・・あ、ありがとう、ございます。」


「じゃ、俺はそこで寝そうになってるジローを起こしてくるね。」









滝先輩に褒められると、お母さんに褒められたみたいで、すごく嬉しい。

それに、滝先輩の頭の撫で方は、優しく撫でてくれるし、どうも照れてしまう。









「あ、マネージャー!」


「ジャッカルさん・・・。名前で呼んでくださって構わないですよ。なんですか?」


「お?じゃあ、って呼ぶな。

 飲み終わったドリンク、立海のやつらのは全部流し台に置いておいたぜ。」


「えっ、ありがとうございます!わざわざ・・・。」


「いーってことよ。そっちのほうが、洗いやすいだろ?」


「はい!遅れてきた上に、そんなことまでしてもらって・・・。」


「気にするな。1人で自分の学校のだけじゃなくて、他校のもやってもらてんだからな。

 他にも、俺だけでも出来そうなことが有ったら言ってくれよ。」


「そんな、仕事なんて無「マッネージャー!洗濯お疲れだったなー!」


「う、わっ。ちょ、暑いです近いです重いです。」


「わりーわりー。ジャッカルがマネージャーを口説いてたから飛んできたぜぃ。」









せっかく、立海大爽やか兼良い人代表のジャッカルさんと和やかにお礼を言っていたところ。

後ろから飛びついてきたのは、赤髪の丸井さん、と・・・。









「あ・・・柳さん・・・。」


「こちらばかり迷惑をかけて、すまないな。仁王や赤也や丸井について。」


「柳さんが謝ることじゃないですよ。大丈夫です。

 真田さんや幸村さん、ジャッカルさんや柳生さんによって立海の好感度はあがってますから。」


「え、俺はねーの!」


「後ろから飛びついてくるので。結構、重いんですよ。」


「だってよー、普段マネジなんて居ねぇし、女の子に世話してもらってることに、

 なんか・・・・燃えた。・・・・ってジャッカルが言ってた。」


「俺かよ!」


「ジャッカルさん、私に萌えたって何もできませんよ。」


「え、お前その発音だと燃えたじゃなくて萌えたになるんだけど。」


「・・・冗談です。」


の冗談、分かりにくいんだよ・・・。」


「話かわって、柳さん。いちいちメモしてるのって、何でですか。」


についてのデータだ。俺が知っている女たちとは違うんでな。」









目を開けることなく、どこから出たのであろうメモをしている柳さん。

幸村さんの発言にも思ったけど、立海大の人って女の人のことで苦労してるのかな。

それにしても、この人、なんで汗かいてないんだろう。

相変わらず私の肩に顔を乗せている丸井さんでさえ、汗をかいているというのに。


・・・なんか、涼しげな人だな。

クーラーなくても、柳さん見てれば涼しくなれるよ。









「言っておくが、俺を見ていても涼しくはならないぞ。」


「・・・え。」


は、顔に出やすい。思っていることがな。」


「へー。マネージャーって、淡々としていると思ったけど、結構分かりやすいんだ。」


、開いた口がふさがってねーぞ。」


「そろそろ行くぞ、丸井、ジャッカル。後、4分25秒で休憩が終わる。

 ちゃんと伸ばすところは伸ばしておけ。」


「うぃー。」


「じゃーな、。あ、洗濯物取り込むのは手伝うぜ。だから、気軽に言ってくれな。」









そう言って、ジャッカルさんは軽く手を振り、腕のストレッチしながらコートに戻っていった。

丸井さんは、ジャッカルさんについていくように、でも私の方を向きながら手をブンブン振っていた。

そういえば、柳さん、何で4分25秒で休憩時間が終わるってわかったんだろう。


なんか、あれだよね。立海大って、氷帝に負けず劣らず個性的な先輩ばっかだよね。


そんなことを考えながら、私は流し台の方へ行った。

すると、立海大だけでなく氷帝のぶんまで流し台に飲み終えたボトルが置いてあった。


・・・なんか、こういうのって些細なことかもしれないんだけど、なんか・・・。









「嬉しい、かも。」


「何が?」


「っき、切原くん・・・!」


「やだなぁ、くん付けなんて他人行儀だぜー?名前呼びで良いって。」


「え、なんで。切は「赤也。そう呼ばなきゃ、ここで犯すよ?」









流し台に立っている私に対して、私を囲むようにして後ろで立っている、切は・・・じゃなくて、赤也。

逃げようにも逃げられない。

なぜなら、赤也の右腕は私の右隣に、赤也の左腕は私の左隣にあるのだから。


赤也の顔は、私の肩に、ある。

名前で呼ばなきゃ犯すよ。なんて、白昼堂々言うセリフじゃない。


逆らえないのは、そんなセリフを言った時、確かに私の耳元で舌なめずりをする音が聞こえたから。


こ、怖すぎるよ・・・。









「あの、赤也・・・?離れませんかね。暑いし、赤也も、もうすぐ、休憩時間、終わる、よ。」


「あー、そうッスねー。しっかし、たまんないねぇ、アンタ。

 口調こそは怖気づいてないようだけど、声は震えてるぜ。」


「気のせいじゃない、の。」


「へへっ。あー、オモシレー。真田副部長に怒られるのも嫌だし、じゃ、練習の準備すっかなー。」









フ、と背中に感じていた赤也の体温と、私の心の緊迫感が解けた。

それで、一度も振り向いていないけど、彼が離れたことを知った。









「用は何。」


「別にー。ブン太さんが密着してたから、俺も密着してみたかっただけ。」









最後に、私の耳元で息を吹きかけながら言うと、じゃーなぁと去っていった。


立海大が・・・っていうか赤也が、怖いです。

こんなこと言うの、自意識過剰かもだけど、









「身の危険を感じる・・・ってやつ、かな。」









今頃連休を満喫しているであろう、我が友人、

私、部屋に戻ったら電話するから、愚痴、きいてください。


















私の書く赤也は大体、ドドドドSです。
・・・・すいません、私の赤也イメージがこんなんなんですorz