「うわぁ・・・あの、切原って人・・・上手いんだぁ。」











あっとべさーん!試合しましょーよー!って、違う人と試合中なのに、跡部先輩を呼ぶ切原くん。

丸井さんは、そんな彼に慣れているのか、切原くんの失礼な態度を気にせず、ラリーをしている。


切原くんのこと、ぜんぜん良く思っていない私だけど。


楽しそうにテニスをしている彼は事実であって、

しかも、無知な私にもテニスが上手いっていうのが分かる。

真面目に練習しなさそうな人だけど、才能だけで、あんな上手くなるものではないはず。

あんなに楽しそうにテニスをしているってことは、とてもテニスが好きなんだろうな。


・・・うん。少し、好感度は上がったかもしれない。


今、跡部先輩と試合している日吉は、そんな彼をとても気に入らないみたいで。

背中を見ているだけでも分かるぐらい、ピリピリオーラを出していた。


























クーラーボックスに氷の袋をたくさん入れて。

少し薄めたアクエリが入っているドリンクを冷やしていく。


これが、午前中最後のドリンクかな。

12時は残念ながら過ぎているけど、昼ごはんがもう少しだと思うと。

どんなご飯なのだろうかとワクワクしてくる。


さて、と。

最後のドリンクも終わってしまったし、何をしようかな。


昼ごはんが終わったあと、きっと先輩たちの練習着の洗濯。

きっと、何回かに分けて洗濯をするんだろうな。

ていうことは、1回目を洗濯し終わったら、2回めを洗濯して、1回目のを干しにいく。

その繰り返しか。

・・・うわぁ、結構重労働になりそうだなぁ。

休憩時間までの時間を計算して、ドリンクもちゃんと作っとかなきゃ。

こりゃー、こんな暇っぽいのは今ぐらいだなぁ。

昼からは忙しくな「ごめんね、ちゃん。冷やすもの、くれるかな?」



「!ゆ、幸村さん!どうしましたか?」


「少し、暑さにやられてね。木陰で休もうかと思って。」


「だだ大丈夫ですか?あ、ここ、どうぞ。今、冷やすもの持ってきますね。」







木陰で体育座りをしていたところ、幸村さんがやってきた。

幸村さん、暑さにやられたって・・・大丈夫かな。

すごい失礼かもしれないけど、病弱そうというか・・・なんか、儚いもんな。


クーラーボックスから、氷袋を取り、氷を何個か取ると、救急バックから氷のうを取り出して入れた。

タオルで氷のうを拭きながら、幸村さんに渡すと、ありがとうと笑って御礼を言われた。

・・・よし。この儚げスマイルにも慣れてきたぞ。








ちゃんは、手際が良いね。」


「そうでもないですよ。日誌とか、跡部先輩に怒られてますもん。余計なことを書くなって。」


「そっか。・・・氷帝は羨ましいな。ちゃんとしたマネージャーが居て。」


「そういえば、立海はマネージャーとってないんですか?」


「まともにやれる人が居ないからね、俺の学校だと。みんな、キャーキャー言って使い物にならない。」


「(使い物にならないって・・・。)私のところも、みんなキャーキャー言ってますよ。」


ちゃんは、跡部たちに興味はないの?」


「変わった先輩たちだな、と思います。

 鳳くんは、良い人で、樺地くんは跡部先輩思いな人。日吉は、親友。

 それぐらいの感情ですね。顔立ちとかは、素直に綺麗だと思いますけど・・・。」







氷のうをおでこに乗せて、顔を後ろに倒していた状態の幸村さんは、そうか、と言って、笑った。


幸村さんの学校は、昔ながらの強豪だって滝先輩が言っていた。

強豪なりに、氷帝ほどまで行かないだろうけど、人数も多くいるんだろう。


それなのに、マネージャーが居ないのは、とても辛いし大変だと思う。

けど、いわゆるファンとかをマネージャーにしたら、

それこそ大変だろうから、マネージャーをとらないんだ。







「あの、おでこに乗せても、体の芯から冷えませんよ。首の後ろを冷やしたほうが良いんです。

 私が抑えてるんで、幸村さんは楽な姿勢で居てください。」


「ありがとう、苦労かけるね。」


「いえいえ。」


「良いマネージャーだね、ちゃんは。」


「良いマネージャーを目指していますからね。」


「ふふっ・・・。あぁ、そうだ。仁王と赤也がちゃんを気に入ったようだけど、大丈夫?」


「ずいぶん迷惑ですけどね。まぁ、それほど支障はないですよ。」


「迷惑なんだ?・・・本当、今までに無いタイプかもしれないね。」


「私は、至って平凡な人間なのですが。ある意味で、ドキドキしますよ?冷静な性格じゃないんで。

 だけど、胸きゅんはしませんね。だから、私が仁王さんや切原くんと変な関係になるはずないんで、

 そこは絶対、ぜーったい、安心してくださいね。」


ちゃんにかぎって、そんなコトはあるはず無いよ。

 どちらかと言えば、仁王と赤也が度の過ぎたスキンシップしそうで、心配かな。」


「アハハッ。それもそうですね。」








こっちで休んでいる幸村さんに気づいたのか、切原くんが、幸村部長ズリーっすと叫んでいる。

それに気づいた、ジロー先輩が、あとべー俺も寝たEと言っている。


ぎゃーぎゃー騒いでいると、二人とも叩かれた。

それぞれの、ボスに。

切原くんは、真田さんに。ジロー先輩は、跡部先輩に。

跡部先輩の叩きにくらべて、真田さんの叩きのほうが数段痛そうだったので。

二人の違いに思わず、笑ってしまった。








「あー・・・疲れたー。疲れたー。ー!つかれたー!」


「がっくん先輩、そんな疲れた疲れた言っても、私は癒せませんよ。」


「向日、さっさとシャワー浴びてこよーぜー。俺、汗ばっかでキモチワリー。」


「宍戸先輩って、がっくん先輩と違って汗が似合う男ですよね。」


「宍戸は、暑苦しい男だからな!」


「爽やかな男だと言え!、お前が洗濯すんだろ?どこに練習着は置いておけば良い?」


「シャワールームに、でっかいハコが有るので、そこに入れてください。

 紙が貼ってあるんで、分かりやすいですよ。」


「ああ、分かった。サンキューな。お前も、お疲れ。」


「そうだなっ。も、マネジやりたてのわりに、かなり頑張ってたしな!お疲れー!」








宍戸先輩には、ポンと頭に手を置く程度のお疲れの合図をされて。

がっくん先輩には、がっくん先輩より少し背が低いためか、わしゃわしゃーっとお疲れの合図をされた。


なんだか、久しぶりに先輩たちと絡んだ気がして、少し嬉しかった。








「岳人も、宍戸も、はよ行こうやー。べとべとで気持ち悪ぅてかなわんわ。」


「あ、忍足先輩。タオル、落としましたよ。」


「お。おおきに、。お疲れやな、シャワー浴びひんの?」


「私は、先輩たちのように汗かいてませんし、大丈夫ですよ。」


「そかそか。じゃ、先に行っとくるわ。自分は、クーラー有るところで、涼んどき。」


「じゃーな、!また後でなー!」


「ドリンク、冷えてて美味しかったぜ。昼のも頼むな。」








手を振り終え、クーラーとソファのある部屋に進もうと、後ろに振り向くと。

日吉と、樺地くんが居た。

いきなり、ズーンと居たので、一瞬前が見えなかった・・・。







「日吉、樺地くん。シャワーは良いの?早く行かないと、全部埋まっちゃうよ。」


「鳳を待ってるんだ。あいつ、タオルが無いとか言って部屋に戻りやがった。」


「そっか。ね、ドリンク、冷え冷えだったでしょ?」


「ウス。暑い日だったので・・・助かり・・・ました。」


「そっかそっか。昼はもっと暑くなるだろうからねっ。もっと冷やしとくね!」








あぁ、ありがとう。と、ぶっきらぼうに言う日吉と。

ウスはウスでも、お礼をこめたウスの樺地くん。

しばらく談笑していると、鳳くんがごめーんって来て。

日吉に怒られながら、3人ともシャワールームに向かって行った。


幸村さん。

やっぱり、顔立ちとか関係ないんですよ。

お疲れさま、って言ってくれたり。

頑張ったなって頭をポンって叩かれたり、わしゃわしゃってされたり。

頑張って作ったものも、美味しかったよとか言ってくれたり。


そんな些細なことでも、私にはすごく嬉しくて。


そういうことをしてくれる先輩たちだから、私は頑張れるんですね。