跡部先輩に怒られたくないし
(しかも2回も怒られることになる!)
だから、出来るだけ、小さな声で。
でも、相手に聞こえるように、ハッキリと私は言った。
「あなたの相手になる気も暇も持ち合わせてません。お目当ての人なんてのも、居ません。」
―5
―
私がハッキリ言うと、切原くんは、一瞬びっくりした顔になって。
「へぇー?」
その後、ニィと笑った。
その笑い方に、思わず背筋がゾワワワーっと来てしまった。
なんなんだ、立海の人たち!笑い方が怖いんだよ!(主に2人。)
逃げるわけじゃないけど、このまま隣に居るのは、なんだか…怖くて。
さりげなーく、前に居る鳳くんと樺地くんと日吉の列にまぎれてみた。
いや!逃げてるわけじゃないよ!
鳳くんと樺地くんと日吉、と私。という順になって。
日吉は、ソローリと紛れ込んできた私に、何だお前って目をチラっとして。
その後、また視線を跡部先輩と幸村さんの方に戻した。
跡部先輩は、淡々と練習メニューの説明をしていたけど。
幸村さんは、こっちを見ていた。そう、ニコニコと。
…いやいや。私を見てるんじゃないんだよ。
うん、そう。私を見てるのでは無いのですよ。
左斜め後ろからは、ものすっごい視線を感じますけどね。
前からは、幸村さんの誰に向けているのか分からない(きっと自分。)笑顔。
後ろからは、なんとも言えない恐怖?ううん、舐め回されるような感覚。
あーっもう、嫌!
「それでは各自、十分にストレッチした後、コートにつけ。」
跡部先輩の高らかな声が、響き。
その高らかな声に、全員が、ハイと答えた。
跡部先輩の声って、返事が無意識にでも出来ちゃうんだよね。
これが、カリスマ的素質って言うのかな。
私は、切原に絡まれたくないがため、さっさとドリンクの方へ向かった。
・・・つもりだった。
「、赤也に絡まれとったじゃろ?」
「やめなさい、仁王君。女性に、いきなり肩を組むなんて。」
「・・・えー、と。柳生さん、ですよね。ありがとうございます。
とっても迷惑なんで、力づくで逃れても良いですか。」
「えっ。すいません、注意しといてなんですが。
あなた、彼に肩を組まれても嬉しくないんですか。」
「逆に聞きますけど、嬉しいもんなのでしょうか。こーいうのって。」
驚いた表情の柳生さんに、眉をよせたまま聞くと、
安心しました。あなたが、学校の女性のような方ではなくて。
と、メガネをくいっとあげて、口角を上げた。
あぁ、なるほど。
この人たちも、跡部先輩たちみたいにモテてるのかな。
とりあえず注意したけど、きっと肩を組まれても嬉しいんだろうって感じ?
・・・いや、私、ぜんぜん嬉しくないんですけど。
朝の件で、警戒力ビシビシですからね、私。
「ていうか、いい加減離れませんかね。仁王さん。」
「嫌じゃよ。俺の腕からは、逃がせないぜよ。」
「なんですか、その俺様発言。俺様キャラは跡部先輩だけで結構ですよ。十分ですよ。
かぶるんで、他のキャラ探したらどうですか。あーーー、もう、離れてください!暑い!」
「俺の手は、いつでも冷やっこいナリ。」
「ひぁ!び、ビックリした・・・。なんですか、その手の異様な冷たさ!」
「が望むのなら、この手でお前さんの体、冷やしてやるぜよ?」
「うっわぁぁぁあ!気持ち悪い、気持ち悪い!」
「に、仁王君がココまで嫌がられるのも、なんだか・・・変ですね。」
「俺はもともと、嫌がる奴を責めるのが好きナリ。
喜べ、。お主、俺のドストライクじゃ。」
「〜!ぜんぜん嬉しくな「仁王センパーイ。ダメっすよ、それ、俺の獲物ッス。」
右を見れば、にんまり笑った仁王さん。
左を見たら、舌なめずりしている・・・切原。
やばい。
なんか、もう、帰りたい。
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