「あー・・・暑い。」
「暑い暑い言ってるから、暑いんですよ。」
「じゃあは暑くないとでも言うのかよ?」
「がっくん先輩、こんな日を暑くないって言う人、居ませんよ。」
「って本当、扱いにくい奴だよなー。」
休憩終了だ、と。
こんな暑い日なのに、跡部先輩の声はとっても堂々として、涼しげだった。
だから、跡部先輩の声、しかもその休憩終了という過酷な命令は。
木陰の下でヘバっている私と、がっくん先輩の耳に嫌でも入ってきた。
「オイこら、そこのチビーズ。ヘバってねーで、さっさとコートに戻ってこい!」
「チビーズって何だよ、跡部!くそくそ!」
「そうですよ、いくら、がっくん先輩がビーズみたいな頭でも!」
「そこかよ!ビーズ意識かよ!ちげーから!チビ意識だから!」
あーぁ。今日も、暑いなぁ。
12.自分予想外
「あ、跡部先輩。ドリンク、どうでした?ぬるくなかったですか?」
「あぁ。まぁまぁよくできたな。しかも、全部員ぶん。」
「意外と出来るんですね。ほら、私、要領良いんで。」
「ばーか。調子こくな。1年のやつらが、ローテーションして手伝ってくれてる事に感謝しとけ。」
「いたっ。感謝してますよ、さすがに私1人はきついですからね。」
「俺様のこの配慮に感謝するんだな。」
「あほべ先輩って、ほんと・・・あ、噛んじゃった。」
「噛んでねーだろ、お前。普通にナチュラルに言ったな。」
いたっ。
また、頭たたかれた。なんなんだ。ぺしぺしと。ぺしっ子か!
決めた。跡部先輩のアクエリだけ、9:1の割合で、アクエリを1にしてやる。
あぁ、その前に、ボトル回収しなきゃ。
新しいの作らなきゃ。それで、冷蔵庫に入れてー。
あ、冷蔵庫の氷も回収して、新しいの作らなきゃな。
・・・あれ?
マネジの仕事、結構慣れてきてない?
うーん、やだなぁ。新婚慣れしてきた主婦みたい。
予想外だな、自分の適応力。
「跡部先輩は、休憩終了って言ったくせに、練習しないんですか。」
「あーん?俺は良いんだよ。大体、監督が居ない時はいつも指示している側だからな。」
「そうですか。・・・先輩、マネジジャージっていつ、届くんですか?」
「そろそろじゃねぇの?そいやぁ、お前、体育着でやってたんだな。」
「そうですよ。半そで、半パンという、とっても涼しい格好ですね。」
「あー。色気ねぇ格好でやってるよな、マネジ。」
「やーだ。色気とか求めるんですか。マネジに。先輩、何させる気ですか。」
「色気も何もねぇ、お子ちゃまにナニかさせる気は、さらっさらねーよ。」
最終的に鼻で笑い、私を見下ろしてくるもんだから、ムっときて、
日吉をも負かしたヒザカックン蹴りをした。
あんのじょう、先輩は、カックンした!
もちろん、怒られましたけど。
「まさか、このまま合宿とやらはマネジジャージ無しとかですかね。」
「それはねーよ。氷帝の名がおちる。」
「なんですか、その言い様。でも、早く届いて欲しいなぁ。なんか、氷帝テニス部って感じですもん。」
「ジャージなくても
氷帝テニス部だろって、ジロー!コートの真ん中で寝てんじゃねぇ!」
隣で腕組をしていた跡部先輩は、コートのど真ん中で大の字で寝ているジロー先輩のところへ歩き出した。
うわぁ、のぼせちゃったのかな。・・・いや、それはないか。
多分、いつもどおり寝ただけだ。
樺地くんが、跡部先輩の命令でジロー先輩を担いでくる。
私は
それを見て、お疲れさまと笑う。
とりあえず、ジロー先輩を休憩時間に
がっくん先輩とヘバっていた木陰の下へと移動させた。
のぼせていたら怖いから、一応、冷たい氷水を含ませたタオルを首の下にまく。
すると、ジロー先輩は満足そうにさらに、いびきを増した。
・・・跡部先輩、私、ジロー先輩のことをめちゃめちゃ爆睡させてしまったみたいです。
まいったな、自分がこんなテキパキと他人の世話をするなんて。
まったく・・・まだマネジして数日というのに、対応力早過ぎないかな、私。
「あー!ジロー先輩の面倒見てる場合じゃないー!氷、氷、ドリンクに、洗濯と掃除ー!」
あぁ、慣れって怖い。
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