「あれ、珍しいね。が俺より先に居る。」
「日吉に起こされました。電話で何回も何回も!」
「お前が遅刻すると、俺が言われんだ。」
「はーい。あ、滝先輩も結構荷物少ないんですね!」
「そうだね、俺は整頓上手だから。」
「私は整頓下手なんで、最小限に抑えてきました。」
「え、普通女の子って荷物多いものでしょ?エナメルバックに入ったの?」
「最小限です。」
信じられないと言う目で滝先輩に見られた。
今日は、大人数VSか弱い乙女一人の合宿始りの日。
氷帝は私と日吉と滝先輩しかまだ集まってなくて。
他校の立海は、榊先生より顧問らしい人と、糸目の人と、美しい人が居た。
…なんすか、あれ。サイヤ人?めちゃオーラ有るんですけど。
個性的な先輩は、うちの部活だけで良いよ。
てゆーかさっ。
私、まだマネジジャージもらってないんだけど。
一応、ジャージ持ってきたけどさ。
いや、これパジャマにしようとしてんだよね。
榊先生なら、きっと用意してくれてるだろうっていう願い。
まぁ、賭けとも言う。
― 1
―
だんだんと、チラホラ集まり出して。
跡部先輩は、来るやいなやサイヤ人のところへ。
がっくん先輩は、何が入ってんだと言いたくなるぐらいの荷物。
宍戸先輩は、さすが男ですね。むしろ忘れ物無いですかと問いたい。
鳳くんは至って普通。君はそのままで居てね。
一番問いたいのは…
「ジロー先輩、荷物らしき物が無いんですけど。」
「んぁー?えーとね、ラケットケースん中に入ってるよー。」
「…私、尊敬します。」
ラケットケースん中に入るぐらいの最低限の荷物なんて凄いな。
さすがジロー先輩だな。
ほけーっと見てると、ジロー先輩の目が起きた時の目になって。
キラキラしたと思ったら立海のところに走って行ってしまった。
「な、なんで…?」
「あー。丸井が来たからじゃねー?ほら、あそこの赤髪。」
「宍戸先輩、シャンクスがジロー先輩と何の関係が有るんですか?」
「赤髪だからってワンピースのシャンクスじゃねーからな。
丸井はジローの憧れなんだよ。」
「憧れ?」
「テニスプレーヤーとして憧れを持ってるんだと。」
「へぇー…。格好良いですねぇ。」
「え、何、。丸井みてぇなのタイプ?」
「そう取りましたか!違くて、ジロー先輩。格好良いですね。」
「あぁ、テニスプレーヤーとしての憧れの方な。」
ライバルであるはずなのに憧れと割り切れるジロー先輩を格好良いと思った。
でも、キラキラしながら丸井って人に話しかけているジロー先輩は、
なんだか恋する乙女みたいで、可愛かった。
なんやかんやで、騒いでるうち、あちらさんも集まったらしく。
跡部先輩が、集合をかけた。
あぁ、あれか。自己紹介でもするのかな。
「合宿についての詳細は、合宿所で話す。
まずは、俺様の新しい下僕、まぁ、マネージャーの紹介だ。」
「やーだ、先輩。なに、寝ぼけてるんですか。訂正しますからねー。
決して下僕じゃない、ただのマネージャーの、です。」
「・・・それだけかよ。」
「え?あ、よろしくお願いします・・・?」
「はぁ。趣味特技の紹介はねーのか。」
「あぁ、特にありません。」
いきなり、腕を引っ張られ、下僕扱いされたので。
ちょっと反抗的になってみた。
だいたいね、いきなり知らない他校生の前に立たせて、自己紹介も何もできるかー!
紹介を練る暇もなく、呼び出されたんだから。
ネタがないに決まってる。
しかも、何にたいしてビックリしたのか。
相手の他校さんたちは、口をぽかんとあけている。
そんなに開けてたら、虫が入りますよ。
跡部先輩に至っては、そんなに自己紹介が気に入らなかったのか、
眉をよせたまんまだし。
あぁ、もう。私が何をしたと言うのだろう。
「ふふっ。面白いマネージャーさんを部員にしたね。うらやましいな、跡部。」
「面白くねーよ。こっちは。扱いにくいにも程がある。」
「跡部が女の子の対応に扱いにくいって言うなんて、ねぇ。
あぁ、俺は幸村精市。部長だよ。よろしくね?ちゃん。」
ニコっと、笑って、私の目線に合わせて腰を曲げた挨拶。
なんだか、すごく丁寧で、やさしそうで。
何より凄く、綺麗。
柄にもなく、頬が熱くなり、差し出された手に、おずおずと自身の手を出して握手を交わした。
そこから、ほかの部員さんたちも、自己紹介をしてきてくれて。
どうやら、私とタメは、切原という人だけらしい。
そして私たちは、バスに乗り込んだ。
アー・・・。
また人の名前覚えなきゃ・・・。

|