「あー・・・。疲れたー。日吉って、毎朝こんなに大変だったんだねぇ。」


「慣れれば大したことねーよ。」


「あぁ、日吉は中学も、ここだったんだよね。

 それなら、慣れてるよねー。跡部先輩の普通じゃない感じ。」


「おい、部活のきつさに疲れてたって言ってたんじゃないのか。」


「え、食い違い?私は、跡部先輩で疲れたって話だったんだけど。」


「・・・・。」












11.恨まれDay













「・・・・うーわ。日吉。なにかな、これ。いじめかな。」


「・・・完璧に苛めだな。・・・始まったか。テニス部マネジいびり。」


「え、これ、伝統?伝統てきいびりなの?」











教室に入って、いつもの場所へ行くと、私の机には酷い落書きが。

おーおー。無残にも傷つけられたな、私の相棒。

・・・いや。こんなに普通に冷静に状況を説明してるけど。

私だって、結構、傷ついてます。

泣きそうですよ。だけど、耐えてやる。それは、なんか、悔しいから。

だって、これで泣いてみ?もう、思う壺じゃんか!

そんなんはさせないもんね。

だって、私が、ハメられたとは言え、やるって決めたんだから。



でも、やっぱり、ちょっと、苦しいな。

多分、あそこの、グループかな。

は・・・、まだ、来てない。

私と仲の良い友達は、私がこの机を見たことに気づくと、

真っ先に、来てくれて、大丈夫?と声をかけてくれた。


その問いにも、私は答えられないほど、むかついていたし、苦しかった。



あぁもう、泣くな泣くな。











バンッ











「!」


「・・・。この机、変えてもらいに行くぜ。」


「え、あ、ひよ「黙ったままで良い。」











日吉が、落書きパレードの机を叩くと、クラスがシーンとなった。

や、もともと、このクラスにしちゃあ静かだったんだけど。


ガタガタっと、カバンを肩にかけたまま、日吉は机を運び出した。

私も、しばらくボケっとしたんだけど、慌てて、もうドアの前まで居る日吉のところへ走った。











「・・・なんか、うん。ありがと。日吉。」


「気にするな。あれは、ほとんど伝統なんだ。

 中等部の時も、何人かマネージャーが居たが、ほとんど、"伝統"で辞めてった。」


「気にしてないよ。ちょっと、びっくりしただけ。」


「・・・へぇ?」


「うそです。ちょっと、気にしてます。」


「・・・耐えなくて良い。辞めても良いんだぜ。」


「辞めないよ。一度、やるって言ったんだし。案外、マネジ楽しいし。」


「バカな奴だな。」


「知ってらぁ。」











職員室に行って、担任に机を見せると、

すっごく驚いていたけど、あぁ、マネージャーになったんだっけか、と言っていた。

うーん。確かに、伝統あるイジメみたい。

私は、高等部からココに入ったから全然知らなかったんだよね。


空き教室の机を勝手に持って行って良いと言われて、この机は?と聞くと、

職員室に置いてって良いと言われた。



空き教室に、そのまま行くと、日吉は何も言わずに机を持ち出した。

私が運ぶと言っても、聞かなくて、驚いた反面嬉しかった。











「日吉に会えて良かったなぁ。」


「はぁ?」


「私、多分、日吉が居るから頑張れるよ、マネジ。」


「・・・そうかよ。」


「あ、照れてる?照れてるねー!日吉かわいー!」


「照れてねーよ!・・・教室でシカトするぞ。」


「すいません、ほんと、それは勘弁して。精神攻撃はやめてください。えぐられる!」


「しねーよ、ばーか。」


「日吉のツンデレ!」











教室に戻ると、机を汚した憎き人たちが集まってきた。

ついに公開リンチかと思って、隣の日吉でさえ睨んでいると。


ごめんなさい、と言った。


いったい、私が行っているあいだに何があったのか。

隣の常に冷静沈着ツンデレ日吉でさえ、この場をうまく理解できていない。


席について、に聞いてみると、にこにこしながら言った。











「こんなに身近に、しかも同性の子がテニス部の正マネになれたんだから、

 いじめるより、利用したら?って言ったのよ。」











なるほどね。私が正マネジだったら、バレンタインやラブレター、その他のプレゼントを、

絶対に受け取らない日吉より、私に渡したほうが確実にテニス部に届くというわけか。


そうだね、。その意見、とても良いと思うよ。

そしたら、私も、あのグループも、何もなく、普段どおりに生活できるしね。



まぁ、イベント以外は。













たぶん、一番、丸く収まるカタチ、かな。
利用されるのも、争いを起こさない上で必要だと、私は思うのです。