「なかなか手慣れてたじゃねーか。洗濯も、掃除の仕方も。」


「自分の事は自分でしろって、言われてるんで。」


「あとは、何だ。日誌の書き方か?そのマネジリストの中で何が分からない。」


「そうですねぇ・・・。とりあえず、ピンクのマーカーが引いてある、

 この、<俺様への忠誠心>と<絶対服従>と<癒し素材であること>が意味分かりません。」


「よく考えるんじゃねぇ。そのままだ。」


「・・・・。」











10.じゃれてなんか無い!












「服従って、私は、あんたのメイドさんですか。」


「マネジって、そういうもんだろ。」


「・・・なんだか、妙に説得力あるんで、納得しておきます。」


「お前って、軽いのか浅いのかよく分からねーな・・・。」


「軽いも浅いも、どっちにしろ褒めてないですよね。あ、先輩、朝のメニューは。」


「まぁ、気にするな。あぁ、そこか。筋トレ、ランニング、ペアのラリーと実践だ。」


「金取れと、ランニングと、ペアの、ラリー・・・と、じっせ、んっと。」


「金取れじゃねぇ。お金を取り合ってどうする。

 なんだ、その一発変換みたいなミスは。筋肉トレーニングだ!」


「・・・修正ペン無いですか。」


「お前、初めて日誌書くのに、いきなりペンとか、すげーな・・・。」











外では、騒がしくも、みんな練習しているというのに。

私と跡部先輩は、二人っきりという妙に生々しいシチュエーションの中、

日誌を仲良く書いています。

跡部先輩は、意外と面倒見が良くて。

丁寧に、日誌の書き方や、マネジの仕事を教えてくれた。

メガネをかけている先輩は、まるで先生のようで。

長くスラーとした綺麗な指は、次のところを書く手順を丁寧にさしてくれた。


世の中、不公平だ。こんなカンペキーニョな人が居るんだから。











「先輩って、誕生日いつですか。」


「あん?10月4日だ。」


「じゃぁ、花はペインテッドセージですね。花言葉は、家族愛。」


「・・・・、お前、花言葉全部覚えてるのか。」


「まさかー。違いますよ。昨日、花言葉の本を読んだだけです。

 あと、10月4日は、ツリガネソウですね。感謝、誠実。

 あ、パセリもですよ。勝利。どれも、先輩に合ってますね。」


「っは。勝利は分かるが、誠実も、家族愛も言われたことねーな。」


「うそだー。だって、跡部先輩、意外に誠実じゃないですか。

 それに、意外と面倒見良いし。家族を持ったら、きっと幸せになれますね。」











隣で立っている、先輩に、笑いながら言うと。

先輩は、一瞬驚いたような顔をして、その後、ふっと、笑った。

うわぁ。ずるい。不公平なぐらい、綺麗な笑顔だ。











「意外がつきすぎだろ、。」


「だって、思ってたイメージと違ったんですよ。まぁ、あまり知らなかったですけど。」


「そうかよ。」


「あ、先輩。この、部長の言葉、は?」


「アー・・・そうだな。を服従させるとでも書いとけ。」


「はい、服従反対革命ですね。」


「何もかすってねーよ。あえて言うなら、服従しか合ってねぇじゃねーか。」


「僕は誰にも服従しない!」


「誰だよ。いきなりキャラ変わってんじゃねーよ。」


「・・・先輩、なんで、そんなに嬉しそうなんですか・・・。」


「さーな。」


「(なんなんだ・・・。)」


「おい、そこ、本当に服従反対革命って書いてるんじゃねーよ!」


「先輩、頭近いですよ!そんな近かったら、何も見えませんよ!頭邪魔ですよ!」


「俺様を邪魔にするなんて、良い度胸じゃねーか、アーン?」


「どんな度胸ですか!違いますよ、うわ、本当に退かないし!わかりましたー。もう書きませんー。」


「おい、なに放棄してんだよ。ちゃんと書きおわらねぇと、日誌を監督に渡せねーだろ。」











ペシっと、頭を叩かれた。

なんすかー!と怒ると、俺様を見てないで日誌に集中しな、と。

なんだか、ものすっごく可哀相になってきた。

なんで、こんなにも痛い台詞をさらっと、真面目に、普通に吐けるのだろうか。

やっぱり、これが、普通の人とは違った跡部先輩のオーラの秘密の一つかもしれないな。

だって、普通の人だったら、こんな発言しないし!











「くはーっ。終わったー。あぁ、でも、わかりましたよ、書き方。」


「あぁ、お前、意外と物覚え良いんだな。」


「それは、先輩が意外と面倒見が良かったからじゃないですかー。」


「あーん?」


「スイマセンすいません、スイマッセーン!ぐりぐり攻撃は止めてください!みさえか!」


「生意気な子供には、こう指導しねーとなぁ?面倒見が良いんだろ、意外と、俺様は。」


「何、地味に八つ当たりしてるんですか!いたたた!ギブ!ギブです!」











頭を両側から挟んでいる、この両手を、掴んで、必死に抵抗すると。

よろしい、とか言って、跡部先輩は解放してくれた。

なんだ、この人!もてるとか、嘘なんじゃないのー!

あー、痛い痛い。

日吉なみに、お仕置きに慣れてる人だよ、ほんと・・・。











「何、じゃれあっとんの、自分ら。」


「え、いつから居たんですか。居たなら助けてくださいよ!」


「いや、助ける間もなく楽しそうやったし。じゃれあってたやないけ。」


「じゃれてなんかいないんですけど!虐待されてたんですー。」












エリートトレーナーの跡部は、捕まえたに構ってみた。
は、エリートトレーナー跡部を少しだけ理解した。