日吉と今日のテストの答え合わせをしていたら
なんだか妙に廊下が騒がしいので、先輩の誰かが来たのかな、どうしたんだろうと考えていた。
ガタッと音がして、目を向けると、日吉が立っていた。
あぁそうか、先輩が来るのに変わりはないんだから、教室の入り口に待っていよう
そう思い、私と日吉は教室の入り口に向かった。
39.きみは、じつにバカだな
「あぁ、日吉。ちょうど良かったぜ。もな。」
「どうかしたんですか、跡部部長。」
「大したことじゃねー。とのテスト勉強の結果を、な。」
「大丈夫です、跡部先輩。赤点はないですね。今のところ。」
「当たり前だ、ボケが。赤点なんて有ってたまるか、アホが。」
「えー…頑張ったんだから、褒めてくださいよー…。」
「頑張ったってのは、結果を見てからだ。」
手厳しいっす、跡部先輩。
でも、わざわざ私のテストを心配して見に来てくれたのかな。
なんだかんだで面倒見良いよね、跡部先輩って。
「そっちの先輩たちは、どうなんですか。テスト状況。」
「ああ、バカ宍戸とバカ向日は、バカ以上に危険分子だからな。」
「わぁ、見事な3バカ扱い。」
「まあ平気だろ。ギリギリとかじゃねーの。こっちのバカ共はな。」
「要はいつもどおりの結果ってことですね。」
「…ん?ジロー先輩って、失礼ですがバカではないんですか?」
ふと気になったことを聞いてみた。
だってあんなに寝てるし、授業中でも寝てるらしいし、
どうも頭が良さそうには見えないんだけどな。いや、失礼だけど。
「あの人は、赤点を取ったことがないらしい。」
「え、まじ?」
「ジローに嫌いなことはねーからな、なんでも吸収すんだよ。起きられればな。」
「へー、凄いんですね。ジロー先輩って。」
「凄いかどうかは微妙だが。」
まぁ俺様に心配をさせないだけ、お前よりかはスゲーよ、バカ。
せいぜい明日も、質素な頭脳を振りかざして頑張るんだな。
そう言い残し、跡部先輩は去って行った。
…跡部先輩、手厳しーっす。
「明日もまたテストかー、がんばろーっと。」
「、今日も俺ん家来るか?」
「うーん、明日は国語と社会と化学だっけ。どうしよっかなー。」
悩んでいると、頭の上にポン、と手が置かれた。
見上げると、日吉の手だった。
来るに越したことねーだろ、来い。
そう言いながら、日吉は少しわかりにくい笑い方をした。
これは私にしか分からない、笑い方、微妙な表情の変化。
「化学の暗記、手伝ってね。」
「暗記ぐらい黙って教科書と睨めっこでもしてろ。」
「なにそれ!日吉の家で勉強する意味ないじゃーん。」
「俺は、とただ一緒に居たいと思っただけだが?」
「〜っ。日吉のばーか!」
また、日吉は笑った。さっきと違って、勝ち誇った感じの笑い方。
これは非常に日吉らしい笑い方。
「まだ先生来ないかなー?」
「さぁな。喉でも乾いたのか。」
「うん。いちごミルク飲みたい。」
「甘さの頂点じゃねーか、それ。」
「日吉、一緒に行こー。」
っち、仕方ねぇな。
そう言いながら、私の手を握り、自販機のところへと。
まだ少しざわつく廊下のなか、日吉と私は手をつないで歩く。
女子たちの視線が、突き刺さる。怖くないと言えば、嘘になる。
本当は人前で手を繋ぎたくない、公表をしたくないと思う自分が居るのも事実だ。
でも、自信を持って歩くことにしたんだ。
付き合ってるんでしょ?と、クラスの友達に聞かれた。私は、うん、と答えた。
恐る恐る答えたんだけど、わーおめでとー!話し聞かせてねー!と、返された。
正直、かなり驚いたよ、そりゃね。でも、ホッとした自分が居るのも事実だ。
跡部先輩に、相談したことがある。
日吉と付き合ってる、って学校中にバレちゃっても大丈夫でしょうか、って。
跡部先輩は、堂々と行け。中学の時ほど、女共も過激じゃなくなってきたしな、って言ってくれた。
滝先輩も、忍足先輩も、がっくん先輩も、ジロー先輩も、宍戸先輩も、鳳くんも樺地くんも。
大丈夫、って。
まー、実際こそこそするのは性に合わないし、どうにかなったらどうにかするし。
だから、日吉と付き合ってることを隠さない。私は、堂々と日吉と付き合う。
来るならこーい!
* * *
「暗記するんじゃなかったのか、。」
「むーーーーーーあーーーーーーうーーーーー。」
「…疲れたんだな。」
「だってさー、さっきまで字と向かいあってたのに、また字と向かい合うなんて、つらい。」
「少し休むか?」
「やーすーむっ。」
ボフッ
「ベットに飛び込むな、埃が飛ぶ。」
「だって眠いよ、日吉。もー目がつかれた。」
そう言って、ベッドでうつむせになる、。
いつもいつも思うんだが、こいつは欲求に忠実で考えなしだ。
いちごミルク飲みたい、と思えば、チャイムギリギリでも買うし
眠いと思えば、授業中で寝て、そしてテスト前は焦るし
突拍子もなく、俺のことをスキ、と言ったり
今だって、彼氏ん家のベットで寝るとか、お前、そういうのわかってんのか?
「制服がくしゃくしゃになるぞ。」
「変な折り目がつかないように、伸ばしてるから大丈夫。」
「スカートめくれてるぜ。」
「中はジャージでしたー残念ー。」
「…襲うぞ。」
「起きる!」 ガバッ
「休むんなら、座って休め、。」
「じゃあ日吉に寄りかかるもん。」
拗ねたように、ベットから降りると、俺の隣にやってきて
体重を俺に掛けながら座った。
「重い。」
「しつれーしちゃう!」
けらけら、と楽しそうに、隣で笑うの腰を寄せ
けらけら、と楽しそうに、笑うの口を、塞いだ。
「…襲ってんじゃん、ばーか。」
「こんなもん襲ったうちに入らねーよ、ばーか。」
拗ねた口に、もう一度、口を落とす。すぐ離れると、さっきよりも真っ赤になった。
突然キスをすると、真っ赤にして口をパクパクするが好きだ。
「彼氏の家で、部屋で、無防備に寝たが悪い。」
「だっ、だって、日吉は大丈夫じゃん、なんか。」
「なにが?」
「なっ、なにがって、日吉だって、何もしないでしょっ。」
「なんで?」
真っ赤だった顔が、耳まで赤くなる。何を言っていいのか分からない、という顔をする。
意地の悪いことを言うと、取り乱すが好きだ。
の髪を、片手で掬い上げ、指に絡ませたり、するりと流れるそれを楽しむ。
はついに、ばーかとでも言いたそうな顔で、俺をジッと見だした。
「日吉のすけべ。」
「じゃあ、そろそろ帰るか?」
「…かえんない。まだ勉強し終わってないもん。」
「俺はスケベなんだろ?居て良いのかよ、。」
「日吉ちょーいじわる!」
「はいはい。」
はいはいって、なんだこらー!
そう言いながら、または笑う。
けらけらと、楽しそうに笑うが、好きだ。

青春ですね。さてさて、そろそろ何か起こそうか。
ちなみにタイトルはドラえもんの名言です。
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