キミは歌う、美しい旋律で 



「リーマス・ジョン・ルーピン。」

「なに?」


「んーん。呼んでみたかっただけ。リーマス・ジョン・ルーピン。」

「なんか、フルネームで呼ばれた記憶ないから、違和感。」


「ほんとう?じゃあ、私が一番最初にフルネームで呼んだ人だね!」

「まぁ、そういうことかな。」


「ふふっ。リーマス・ジョン・ルーピン。」

「なんか、キミの言い方は、歌を歌ってるみたいだ。」


「そうだね。だって、リーマス・ジョン・ルーピンって、すごくリズムが良いの!」


音楽好きの私としては、曲もつけたくなっちゃうわ!

そう言いながら、キミは笑う。
両手の人差し指で、まるで、指揮者のように縦横無尽に振りながら、キミは、僕を呼ぶ。

キミが歌のように言っているのは、僕のフルネームなのに、
どこか、違う国の音楽や、聞きなれない言葉のように、

美しい旋律のように聞こえた。



「シリウス・ブラック。ジェームズ・ポッター。んー…。」

「あははっ、顔がすごいことになってるよ。」


「うーん…ピーター・ペティグリュー。リーマス・ジョン・ルーピン。」

「…どうしたの?」


「んー。やっぱり、ルーピン君の名前が一番、綺麗な歌になる!」



うん

僕も、キミの口から他の男の名前を聞きたくないし。
キミの口で、キミの旋律で、他の男の名前を奏でてほしくない。

僕が何度言っても、苗字で呼ぶキミが、唯一、僕の名前を呼んでくれる時間。

僕はこの時間を、守りたい。
いつ離れ離れになってもおかしくない、時代だから。