受け止めてくれる、君
「忍足くん忍足くん。」
「なんや?」
「髪に葉っぱついてるよ。」
「おおきに。」
「取ってあげようか。」
「ええよ。自分、届かへんやろ。」
「そうだね。」
「忍足くん、忍足くん。」
「なんや。」
「目の下に雫があるよ。」
「・・・おおきに。」
「取ってあげようか。」
「ええよ。自分、届かんやろ。」
「そうだね。じゃあ、せめて、私の胸で泣いてみたらどうかな。」
「泣いてへんよ。アホか。俺、試合に負けたぐらいで泣くやつやあらへん。」
「そうだね。じゃあ、その目の下の雫は、汗かな。」
「せやで。汗や、汗。」
「じゃあ、私の胸でその汗を拭いてみたらどうかな。」
「・・・嫌や、そないなペタンコな胸。」
口とは反対に、俺の頭は、かがんでいった。
落下地点は、キミ。
泣いてへんよ、これは、頑張った俺に対する汗なんや
その言葉は 声に出ることはなかった。
声にならない声、どうしようもできない現実への悔い。
なぁ、かっこわるい俺、さらけだしてもええやろか?
「言うとくけど、今から流すんは、大量の汗やからな。」
「大丈夫、私いっぱい着替え持ってきてるから。」
「後で汚い言うて文句たれこんだって知らんからな。」
「大丈夫、大丈夫だから、忍足君。お疲れ様。」
お疲れ様なんて、今日聞くはずの言葉じゃなかったのに。