「日吉ー。日吉ー。」


「うるさい。」


「良いよ、大丈夫だよ。私が、持つよ。

 日吉、テニスバッグも持ってるじゃん。」


「お前に持たせると、危ねーんだよ。」


「そうかなぁ・・・。」







久しぶりに早い帰り道。

夕焼け、あかね空、隣に日吉。


私にとって、とても心地よい時間と空気。








「ねぇ、やっぱり良いよ。その救急バック。私が持つよ。」


「・・・大体、なんで、こんな重いモンを持って帰ろうとしてんだよ。」


「だって、明日は氷帝に寄らないでしょ。

 選手の人たちに、こんな重いモノ、持って帰らせられないよ。

 まぁ、今は日吉が持ってるんだけど。」


「お前が持つと、なんか危なっかしくて、いらつく。

 なんか・・・落としそうだろ。」


「えー。そーいうこと?私があまりにかよわいから、とかじゃなくてー?」


「それは無い。ただ、お前に持たせたくないだけだ。」









前を向いたまま、日吉がハッキリと言った。

持たせたくないって、どういう意味だろう。


やっぱり、落としちゃいそうだからかな。

まぁ・・・なんかコンビニ寄ったら、そのまま置いていっちゃうかもしれないけど。









「ねぇ、日吉。」


「なんだ。」


「私、そんなに頼りないのかな。」


「・・・は?」










思わず、私が立ち止まって、うつむきながら言う。


いきなり止まった私に対して、少し先の方を歩いていた日吉。

足を止めて、そのあとすぐに、ザッザッザッていう足音がした。

うつむいていた為、少し暗いコンクリートしか見えなかった視界に、

日吉のであろう、足と靴が入ってきた。


頭の上で、日吉の声がする。








「頼りないとは言ってないだろう。」


「言ってるよ。だって、私に持たせたくないんでしょ。」


「それは・・・!お前が、重いモン持ってるの、は・・・・・から。」


「えぇ?何、聞こえない。」


「お前が重いモン持ってるのは、気になるからっつってんだよ!

 だから、頼りないって言ってるわけではなくてだな、俺が気になるだけなんだ。」







顔をあげると、真っ赤な夕焼けのせいなのか。

それとも、ただの感情表現が珍しく日吉の顔に表れているのか。

どっちか、わからないけど、言うだけ言った日吉の顔はソッポ向いていて。

横顔でも、わかるくらい真っ赤だった。


気になるから、って。






「頼りないんじゃなくて、ただ、心配してくれてんの?」


「知らねー。」


「ちょ、待ってよ!荷物2個持ってるくせに、歩くの早・・!」


「・・・半分、持て。」


「半分って、この紐の・・・?へへっ。」


「・・・んだよ。」


「ううん。ありがとう、日吉。」










うーん、やっぱり
には適わない。









それから、私と日吉は

真っ赤な夕焼けのなか、四角い救急バックの紐を、片紐ずつ持って、帰りました。


少し振り返ると、私と日吉の影が、つながっているようで。

なんだか嬉しくなりました。








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