滝先輩は、綺麗だ。

綺麗の代名詞と言っても良い。


そのぐらい、私の中で、滝先輩は綺麗だと思う。






「ごめんね、気づいたら部室が汚くなっていて。」


「いいえ、滝先輩のせいではないです。

 悪いのは、がっくん先輩とジロー先輩と、宍戸先輩と、忍足先輩です。」


「ず、ずいぶん特定したね。」


「はい、真理です。」







あはは、と笑いながら、滝先輩は一つずつ、

ゴミ・脱ぎたてのユニフォームを拾っていった。

ちなみに、滝先輩のロッカーは、一番綺麗です。

そう。

つまり、滝先輩は、チームメイトのゴミや脱ぎたてユニフォームを拾ってる。


それは私の仕事なので、先輩も練習行って良いですよ!

って、私が言っても。


良いよ、こーいうの見たら、綺麗になるまで気が治まらないんだよね。

って、滝先輩は笑う。






「滝先輩は、綺麗好きですよね。私、滝先輩のロッカーの周り、掃除したことないです。」


「なんだか、ぐちゃぐちゃになってると落ち着かないんだよね。」


「なるほど。滝先輩の綺麗さは、内面からも来てるんですね。」


「ええ、何それ。」






ふふ、と滝先輩が笑う。

滝先輩は、どっからどう見ても、絵になる。

なんか、美形軍団なテニス部だけど、滝先輩は、どっか違う世界の綺麗だと思う。


チームメイトとは言え、長年の仲間とは言え、

ゴミや、使用済みユニフォーム・・・もっと酷いのなんて、脱ぎたての靴下だ。

そーいうのを、私みたいに指先で持ったりしないで、

わぁ、こんなのまで有るよって笑いながら普通に持っているところとか。







「滝先輩は、綺麗ですね。」

「・・・?どうしたの。」

「滝先輩を模範にします。そうですよね。本来、私がするべき仕事なのに、

 こんな・・・先輩に対して、こんな失礼な持ち方してるんですから。すいません。」

「こんな、って、ああ。指先持ちのこと?いやだなぁ、普通だよ、君は。

 俺は、小等部からだから、慣れてるんだ。こーいう片付け。」


「いいえ!滝先輩は選手です。私に任せてください!

 氷帝高等部テニス部正マネージャーとして、尽くします!」


「ふふっ・・・あははっ!」


「ど、どうしました・・・?」


「ご、ごめんね、ふふっ。なんだか一生懸命で可愛いなぁって。

 俺のこと綺麗だって言ったけど、俺は、君のほうが綺麗だと思うよ。」


「そ、そんなことないですよっ。」


「そうだね、内面が綺麗だから、綺麗って思うんだろうね。

 もう、すっかり氷帝テニス部マネジだね。 いつも、俺らのために、ありがとう。

 今までのマネジで、一番だよ。本当はすっごく100点満点あげたいけど、

 もっと伸びると思うから、90点。100点目指そうね?大丈夫、できるよ。約束。」








とてつもなく
麗な笑顔で、







滝先輩は言った。


そっか。滝先輩を綺麗だって感じるのは、

滝先輩特有の優しさや思いやりが有るからだ。

温かい滝先輩のぬくもりが、私の小指から伝わってきた。







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