「なぁなぁ、この新技どう思うよ!」








がっくん先輩の声に呼ばれたかと思うと、

がっくん先輩は、いきなり飛んだ。


そして、着地のとき、








「いってーー!!!」








失敗して、足を捻ってしまった。



急いで、樺地くんを呼んで。

右足を押さえてうなっている、がっくん先輩を部室へ運んでもらった。


今日は、日曜日。

保健室の先生は、居ないはずだからだ。








「い、いたたた・・・・。」


「あ、でも、赤くなっているだけで、腫れてませんよ。

 これならきっと、1週間・・・いえ、もしかしたら、そんなにしないかも。」


「くっそー・・・。」


「痛いですか?氷のう、もうちょっと作ってきます。

 ここで大人しく待っていてください。」


「・・・また、日にち、無駄にしちまう・・・。」


「・・・え?」








ドアの方に向かっていく途中、がっくん先輩の、か細い声が聞こえた。

振り向くと、氷のうを足に乗せたまま両足を伸ばして、

左腕を顔に当て、ソファに横になっている先輩。


左腕で、ほとんど顔が隠れているけど、声で分かった。

がっくん先輩、何かに、悔しがっている・・・?


私は、氷のうは後にして。

がっくん先輩のソファに近寄り、床に座った。








「どうしたんですか、がっくん先輩。何でしたら、聞きましょうか。」


「うっせー!今のは、独り言だー!くそくそ!早く行けよ!」


「まぁまぁ、先輩。煮詰まったものは、人に出したほうが楽ですよ。」








ね?と、先輩のほうを向いて言うと。

これからのは独り言だからな!だってさ。

はいはい、と返事をして。がっくん先輩は、独り言を話し出した。








「・・・俺さ、短期決戦型ってやつで。まじで、スタミナねーんだ。

 そのせいで、パートナーの侑士には、かなり迷惑かけてて。

 来年、俺たち、最後の夏だし。このメンバーで、テニスすんの、最後だし。

 悔い、残さねーようにって、高校生になってから、走るようにしてて。

 今年になって、なんか、気が焦りだして。新技、スタミナ、新技、スタミナって。

 そしたら、からまわりで、怪我ばっかしてっし・・・。」







最後に、情けねー!と叫んで、がっくん先輩は、以上。向日岳人の独り言。と言った。


だから、私も独り言。








「がっくん先輩は、大丈夫です。がっくん先輩、がんばってるじゃないですか。

 走ってるの知ってますし、忍足先輩も、やりすぎ注意やってぼやいてましたし。

 がっくん先輩は、がっくん先輩ペースで続けてれば良いんですよ。

 時に、こーいう休みも必要ですよ。怪我の功名ってやつですね。」









がんばってる、 ミへ。









「がっくん先輩、サイコーにミソってますよ。」


「意味わかんねーし・・・バーカ・・・。」





最後のがっくん先輩の声は、少し、震えてた。










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