「宍戸先輩、自主練、おつかれさまです。」


「オー。残っててくれたのか。わりーな。」


「いえ。私も、まだ、仕事残ってましたし。

 どうぞ。まだ、ドリンク残ってますから。」


「わりーな。サンキュー。」








暗い夜でも、まだ、スポットライトで照らされているコート。

設備も良い氷帝テニス部だからこそ、こんな夜まで自主練するのかな。


・・・ううん。


宍戸先輩は、きっと、暗がりだろうとドコだろうと、自主練するだろう。

鳳くんから聞いた、中学のときの宍戸先輩の話。


敗者切捨ての厳しい、この学校のテニス部ルール。

その中で、宍戸先輩は落とされたけど、諦めずにまた復活した。


うん。負けを知っているからこそ、宍戸先輩は、自主練する。

自分の実力を満足しないからこそ、宍戸先輩は、自主練する。








「宍戸先輩、カッコイーですね。」


「はァ!?いきなり、なんだよ!」


「いーえー。宍戸先輩が、練習してる姿、きっと誰よりもカッコイーですよ。」


「おいおい、なんだよ。褒めても、俺ァ奢らねーぞ。」


「わかってますよ。先輩、財布の中、がけっぷちですもんね。」


「見たのか。俺の財布を、見たのか。」


「忍足先輩が言ってました。」








そう言うと、宍戸先輩は、忍足のやろうと叫んだ。

コート内に響く声は、なんだかとっても爽快で。








「先輩、今のもっかい!」


「な!なんか、すげー気持ちよかったな!お前も、やれよ!」


「じゃぁ、いきます。

 宍戸センパーーーーイ!」


「うお!お前、隣に本人居るのに、名前呼ぶなよ。」


「へへ。すいません。あ、先輩。じゃあ、宣誓を叫ぶとかにしません?」


「オー。いいぜ。じゃあ、言いだしっぺマネージャーから。」







了解しました、と言って。

コートのはじから、真ん中に移動する。

スポットライトが思いっきり体にあたって、まだ夏の夜には暑いけど。


空を見れば、ものすごくキレイな夜空なので、やっぱり爽快な気分になった。











「私、氷帝高等部男子テニス部正マネージャーはー!
 
 マネージャーを途中で辞めないことを誓いまーーーーーす!」









私の誓いは、空に向かって飛んでいった。

後ろを振り向くと、宍戸先輩が、辞められたら困るんだよ、って笑いながら言った。

そして、伸びをしながら、私の隣までやってきて。










「俺、氷帝高等部テニス部男子レギュラー宍戸亮はー!

 もう誰にも何にも負けねぇこと誓います!」









私より、ぜんぜん、文章を伸ばすことはしなかったけど。

宍戸先輩の声は、私のより響いた気がした。


爽快ですね、って言おうとした私の瞳にうつったものは、


空を見つめたままの宍戸先輩の、







りりしい顔だった。



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