「ヴィッキー。まぁた、女の子をからかっているのか。」


「好きだねぇ、ヴィッキーも。」


「からかってると言うレベルでは無いだろう。あきらかに、泣いているぞ。」


「ヴィッキーは、ターゲットにした女の子の泣き顔が大好きなのさ。仕方ないこと。」


「その性格を知った上で、付き合おうとする彼女も彼女だと俺は思うね。」


「恋に溺れる者は、いつでも愚かだ。」


「え、セブルス。なかなか、大人の発言じゃん?」


「ふん。」








姫とスリザリンと友人と、








「あ、!・・・ま、そういう事だから。お前、飽きた。」








いくら距離があるからと言っても、ヴィッキーの元彼女に吐く言葉は私にも届いた。


ヴィッキーは、いかにもスリザリンらしい奴だ。

狡猾で、目的のためには手段も選ばない。

しかも、ターゲットにした女の嘆く顔が好きだと言う。


まったく・・・。悪役らしい友人を持ってしまったな。


いくら彼がターゲットにした女の嘆く顔が好きだと言っても、私にはただの友人。

ヴィッキーは私に危害を加えない。

ヴィッキーも私を友人と思っているから。


ハッフルパフやレイブンクロー、もちろん、グリフィンドールにも彼を嫌う奴は多い。

それでも、スリザリンでは結構人望が厚い。

ヴィッキーは、スリザリンに誇りを持っているし、自分の友人には危害を加えない。








「よう、。セブルス。クリードも。お前ら、いつも一緒だな。」


「私の隣にクリードが居るのは、昔から当然さ。」


「僕は、意識して一緒に居るわけではない。こいつが一緒に居るんだ。」


「セブルスを放っておくと、研究に没頭して、いつ倒れるか分からないからね。」


は僕を世話しているつもりか?それなら甚だ食い違いだな。

 世話をしているのは、僕だ。お前に世話をされるほど、バカではない。」








隣のセブルスが、鼻で笑うように、そう言った。

セブルスが意地っ張りで、素直じゃない性格を分かっていなかったら、

この発言にカチンと来るだろうけど。

あいにくセブルスの性格も分かっているから、おかしくて、思わず笑ってしまった。








「次、変身の授業だね。グリフィンドールと一緒だ。」


「あー。グリフィンドールかぁ。セブルス、くだらねぇ挑発に乗るなよ?」


「アークス。僕が、あいつらの下らない挑発に乗るわけないだろう。」


「そうか、それなら良いけどなぁ。」


「ところで、ヴィッキー。君は、グリフィンドールと一緒だと言うのに、嬉しそうに見えるけど?」








「ふふん・・・よくぞ聞いてくれた。最近、良い玩具を見つけたんだ。
 
 その名もホグワーツのマドンナと呼ばれている、リリー・エヴァンスだ!」








「・・・リリー・エヴァンス?あぁ、あの、非の打ち所の無い綺麗な子だね!」


「しかも、ジェームズ・ポッターと並ぶ、首席の奴だろう?」


「クリードも、も、感心しているように見えるが?しょせん、グリフィンドールだぜ。」


「しょせんでもないさ。現に、一番を取っているのだからね。」


「ヴィッキー、こう見えて、は悔しいんだぜ?」


「でも、一番を取られっぱなしは嫌だなぁ。ねぇ、セブルス?」


「・・・言われなくても、僕は絶対に首席になってやる。」


「おぉ、燃えてるな、セブルス。つーか、は首席になろうとしねーのか。」


「ヴィッキー。人には不得意科目があるだろう?」


「あ、そういやー、、薬草学が半端なく出来なかったな。」


「どうも、あーいう1グラム単位の世界ってのが、ね。ドバっと入れたくなる。」








そりゃ、お前、失敗するに決まってるだろ。




と、言う、ヴィッキーの声をスタート音にして、

クリードも笑い出した。セブルスも、クリードやヴィッキーのように笑うのではないけれど。

長く隣に居る私は、セブルスの声無き笑いが分かった。


そろそろ、教室が見えてくる。

グリフィンドールに、睨みをきかせる奴らも出てきた。

もちろん、こっちに睨みをきかせる奴らも。


ヴィッキーが、あ、と声を漏らした。

彼の視線の先には、悪戯仕掛人たちと一緒に居る、リリー・エヴァンスが居た。

あぁ、だから、ヴィッキーがどことなくワクワクしているんだ。


さっき、ヴィッキーが、リリー・エヴァンスを玩具呼ばわりしていたのを思い出した。



今にも、からかいに行きそうなヴィッキーの足に、足掛けをして。

つまづくのを確認すると、彼は予想通り、何するんだと振り返った。








「いくら宿敵寮と言えど、
 玩具呼ばわりするのは嫌いだよ。」









ね?と、にっこり笑う。

彼は、わりーな。は、そういう言葉が嫌いだったな。

と、頭をポンと叩いた。