何気なく寄った、図書室。 一人の女が、一生懸命に背を伸ばして、手を伸ばしていた。 なんとなく、俺はその光景を可愛いと思った。 ここからじゃ、寮のネクタイは見えない。 どこの寮かも分からないが、あんな可愛い仕草をする奴がスリザリンな訳がない。 そんな無駄な根拠を力強く信じて、俺はその女の元へ行った。 美麗的悪戯少年の 姫への思考 実際、結構高いところに本が有るのかと思えば、 なんだ、ぜんぜん高くねぇ。俺が手を伸ばせば手が届く。 だから、ヒョイ、と先に取ってあげて、ほらよ、と渡した。 顔を上げた、その可愛い仕草の女は、グリーンとシルバーのネクタイに、 眼帯をしている、スリザリンのアイツだった。 そうだ、名前は確か―・・・。 「・!」 「・・・ありがとう。これ、どうしても今日読みたかったんだ。」 「っち、スリザリンのやつかよ・・・。取ってやって損したぜ。」 「だろうね。私も、グリフィンドールに助けられて心底ビックリだよ。」 「言っとくけど、別にお前だと分かっていたら助けてねーからな。」 いつも、スニベリーとバトっていると、こいつが現れる。 しかも、つい先日、スニベリーを守る宣言をされたばかりだ。 女に護られるなんて随分、弱いんじゃねーのと、言いたかったが。 あのときのコイツは、そこらの男より強そうな気がしていた。 ・・・・たぶん、あの目つきを知っているからだ。 ジェームズだって、何かを決意をした時、あんな目をする。 リーマスだって、俺らに、自身の秘密を話してくれた時は、あんな目だった。 ピーターの、あの目つきだって見たことがある。 「・・・ところで、いつまでソコに居るんだ。」 「あ?俺がどこに居ようと勝手だろ。」 「そうじゃなくてね。今度は、この本を元の場所に戻したいんだ。」 そこ、どいてくれないか。 俺が立っているすぐ隣の本棚を指差した。 確かに、俺がここに居る理由は何もない。 だから、舌打ちをして立ち去ろうとした。 ・・・だけど、俺が振り返ってしまったのは。 俺の予想通り、また無理に背を伸ばして手を伸ばしていたからだ。 いやいや、関係ねーぞ。 確かに、俺は世話焼きがわだが、スリザリンの女を相手にするほど優しくは無い。 ・・・・だけど、どうしても気になって仕方なかったので、 ・から抱えている本を無理やり奪って、また俺が戻してやった。 「なんだ、案外紳士じゃないか。」 「うるせぇ。お前が、気になるようなことをするのがイケネーんだ。」 「そう、それは悪かったね。」 「もっとミルクでも飲んで背を伸ばしたらどうだ?」 「ミルクは好きだよ。ていうかね、私が小さいんじゃない。シリウス・ブラックがデカすぎるだけだ。」 「あー。まぁ、俺は八頭身的モデル体型だからな。」 「同じようなことを、ポッターも言っていた気がする。さすが、仲間だな。」 「わりー。ジェームズとは親友だが、一緒にしないでくれ。」 「私には、二人とも同じだよ。まるで、双子のようだね。」 「・・・そうだな。俺も、ポッター家なら良かったかもな。」 自分が言ったことに、思わず、ハッとした。 こんな台詞、友達でも親友でも無いやつにする台詞じゃねぇ! ましてや、俺が嫌っている、ババァどもと同じ、スリザリンに。 「ポッターと同じ家、ね。よく考えて。あいつが弟か兄だよ。」 「・・・・どっちも嫌だな。」 「そうだろう。」 思っていた言葉と違った言葉で返ってきて。 少し拍子抜けした。実にスリザリンらしい台詞がくると思っていたのに。 拍子抜けした言葉を発した、そいつは俺の隣で耐えるように笑っていた。 思わず俺も、ジェームズと同じ家族ということを想像して笑った。 そこから、なんという不思議なことに、俺はスリザリン寮の・と談笑していた。 だから、ちょっとはこの現状に戸惑っていた。 「戸惑っているね、シリウス・ブラック。仕方ない、普通なら仲悪いからね、私たちは。」 「・・・なんで、そんな穏やかなのか分からねーな。」 「私だって、いつもピリピリしてるわけじゃない。ただ、会う時に必ず怒っているだけさ。」 「あぁ、俺らと会う時は、だいたいスニベリー絡みだからな。」 「そう。だけど、私は最初から嫌いってわけじゃないよ、シリウス・ブラック。」 「はぁ?おかしいだろ、俺はグリフィンドール!お前はスリザリンだ!」 「そこで、くくっちゃいけないな。もっと端的に行くべきだよ。人間の中身として、ね。」 「・・・・まるで拍子抜けだぜ。意外性ナンバー1だな。」 「じゃあ、そのギャップを狙っていこうかな。」 なるほどな、ジェームズ。 俺も、ちょっとは好きになれたぜ。ちょっとは、だけどな。 確かに、お前が好きそうな奴だったよ、・は。 そろそろ夕食だ、と言って、図書室を出るとき、高いところにあるものを取る魔法を教えてやった。 すると、・は、私と思わなかったから優しくしたんじゃないのか、と言った。 「バーカ。敵意なしの奴に冷たくしてどーすんだよ。」 ・の、大切なものを傷つけられた時の世界と、普段のアイツの世界は違う。 そういう割り切った奴ってことが分かって、まぁ、俺も割り切ろうと思う。 |