「あー・・・。えっと、名前。名前が、なんだっけ。」 目の前で、こちらを呆然と見ている赤毛の見目麗しい少女。 そう、確か、ヴィッキーがこの前言っていたんだ。 名前、名前・・・。 「ちょっと待って。ここまで来ているんだ。えっとね・・・。」 左手を額にあて、自身の喉を指でトントンとたたいて示して見せた。 そう、喉まで来ているんだ。だけど、出てこない。 「あぁ、そうだ。リリー・レヴァンヌだね!」 ポンっと、手を勢いよく叩いてみたけれど、 どうやら私は場違いらしい。 それもそうだ。 だって、この赤毛の見目麗しいリリー・レヴァンヌという少女は、 ただいま私の目の前で、呼び出しをくらっている真っ最中なのだから。 もはや、呼び出しをしているグリフィンドールとレイブンクローの少女たちまで、私を呆然と見ていた。 赤毛の見目麗しき少女 「ちょ、あんた・・・なんなのよ!さっさとこっから立ち去ってくれない?」 「Ms.。悪いけど、あなたも痛いことはされたくないでしょう?」 「わかっているよ、Ms.ナイトレイ。ただ、名前がどうしても思い出せなかっただけなんだ。」 「ねぇ、あなた。良いのよ、当事者は私。あなたに危害させたくないわ。」 「・・・君、本当に可愛いね。うん、ヴィッキーの言うとおり。」 「・・・。」 思い出したことで心の中はスッキリし、私は手を振りながら、その場を去った。 ・・・いいえ。去ろうとした。 さっきまで喉につっかえていて名前が思い出せなかった少女は、グリフィンドール。 ・・・寮というだけで、差別するつもりはない。 だけど、救おうという気はサラサラの砂のように、全体的に薄かった。 たぶん、昨日、またあのポッターたちとセブルスがいつものように対峙していたから。 しかも、グリフィンドールはポッターたちを悪乗りさせる。いつも、いつも。 心のどっかで、グリフィンドールに対し苛立ちを覚えていたからかもしれない。 ・・・なんて分析している頭より早く、私はリリー・レヴァンヌという少女の前に立っていた。 「え・・・?」 「どういうつもり?Ms.。その子はグリフィンドール、しかも穢れた血よ!」 「そう。まぁ、そんなこと、どうだって良いのだけど。 ねぇ、Ms.ナイトレイ?あと1・2分したら、君の寮監が通ると思うよ。」 「それがなんだというの。」 「冷静に、よく考えて。この状況、あきらかに咎められるのは君たち。 君たちが好意を寄せているポッターたちが、クディッチでとった点。 それを減点させたいの?もったいないと思うけど。」 強くそう言うと、彼女たちは顔を見合わせて、 それもそうね、と。礼を言うわ、と。 パタパタと去っていった。 どんなに標的に強く出ていても、寮監に怒られるのはつらい。 しかも、あのマグゴナガル先生に怒られるのは相当つらい。 そこを突けば、簡単に解決できる。 憎まれもしないだろう。あっちだって、嫌な気にはならない。 むしろ忠告してくれた私に対して、好意を覚える。 丸く収まるかたちだ。 「さて。じゃーね、リリー・レヴァンヌ。」 「・・・あ、ちょ、ちょっと待って!」 「あぁ、さっきはあまり君の話を聞こうとしなくて悪かったね、ちょっと黙っててほしくて。」 「ええ、わかってるわ。あなた、何か考えがあるように見えたから。 私が下手に口を挟まないほうが良いと思って。」 「うん。それは、ものすごく賢い選択だね。首席というのは本当らしい。」 「ふふ、ありがとう。ねぇ、あなた、・ね?」 「へぇ。そんなに私は有名人だったんだ。 ・・・・言っておくけど、私は誰にでも救いを出す正義の味方とかじゃないから。 ただ、やり方が気に入らなかったんだ。卑怯な手は嫌いでね。 それじゃあ、また逢うか分からないけど。またね。」 そうだそうだ。長居は無用。 早くマダムのところに居る、セブルスのところへ行かなきゃ。 セブルスが逃げないように、クリードを見張りにしているし。 さっさと別れてしまおうと思い、まっすぐ道を進んだ。 「ねぇ!って呼んで良いかしらー!?」 助けたとは言え、スリザリンに名前呼びして良いなんて言うかなぁ。 ・・・まぁ、この子とは気があいそうだ。 ヴィッキーには、あまりやりすぎないように注意しとこう。 いいよ、と大声でいうのが嫌だったので。 オーケーの代わりに、手を軽く上げた。 ![]() 2010. 5/25 誤字修正いたしました。ご報告ありがとうございました。 |