「Ms.?」


「・・・なにか、用?Mr.ルーピン」


「図書室に行くんだろう?僕もなんだ。良いかな。」


「え・・・いや「重そうだね、その羊皮紙。持ってあげるよ。」








なんなの、この人。

私、真正面で嫌いって言ったのよ。

なんで、ニコニコ笑って、ついてくるの。








So I don't LIKE    2 










「あれ、リーマスとMs.が歩いてる。」


「え、うそー!私、あの二人は仲が悪いと思ってたのに!」








「・・・どうして、一緒に歩こうとするの!私は、一人で歩きたいの!」


「でも、僕も図書室行くんだ。それなら、一緒に行った方がいいでしょ?」


「そんなことないわ。」


「じゃあ、Ms.を先に歩かせたとして。僕は、その後ろを歩くの?

 どのくらいの距離を離れたら君は良いの?君も、後ろが気になるんじゃないかな。」



「・・・勝手にすれば良いじゃない・・・。」








だめだ。絶対に、口勝負でルーピンに勝てない。

あぁ、もう、早く、早く図書室に着いて。

長い長い時間が経ったような感じでついて、真っ先に私は、ルーピンから離れるように席へ。


・・・なのに、また、ちゃっかりルーピンは私の隣の席についた。


睨んでも、効かないだろう。それなら、本に集中するまでよ。








* * *








「Ms.、君は僕が君を嫌いだと思ってる?」


「当たり前でしょ。だって、真正面から嫌いって言った人を嫌いにならないわけがないでしょ。」


「僕は、君が嫌いじゃないよ?」


「はぁ!?」








思わず、誰もが振り向くような声で言ってしまった。

みんながジロジロ見てるので(ただでさえ目立ってるのに!)

口に手を当て、何を言ってるの、と叫びたくなる衝動を抑える。








「あなた、マゾ?」


「アハハ。違うよ。でも、僕は今まで陰口しか言われたことなかったから。

 真正面から言われて、君が自分と向き合ってくれてるような気がしたんだ。」


「そんなの、勘違いよ・・・。私は・・・。」








あなたと向き合ったわけじゃない。

誰かと向き合ったわけでもない。


嫌いって言ったら、私は、あなたの香りや笑顔を忘れられると思ったから。


苦しかったの。

一瞬、見ただけなのに。


ただ偶然、ルーピンの笑顔を見ただけなのに、もう頭にくっついちゃって、離れない。


ふわふわのカフェモッカのような優しさ。

それは、心が暖まって、とろけるような優しさ。

一度飲み込むと、病み付きになりそうな、麻薬のような。

一度手を出すと、止まらない甘さ、だから甘いものは嫌いよ。








「あなたと向き合ってないわ。自分とも向き合ってるかなんて、わからないの。」


「うん。じゃあ今、向き合ってみてよ。」


「何、言ってるの。どうして、よ。」


「僕、こう見えて鋭いんだよ。僕には、Ms.の気持ちが見えてるよ。でも、教えてあげない。」








ニッコリと笑う、ルーピン。

教えてあげない、って・・・。あなた、意外と良い性格してるのね。

私が眉を寄せて睨むと、


じゃあ、カウント取るからね、5・4・3・2・1、ハイ、さぁ向き合って?


勝手にカウント取り始める、ルーピン。

ついてゆけない私をよそに、彼は鼻歌まじりに本を読み出した。


彼は何が言いたいのだろう。

私の気持ちが見えている?意味がわからないわ、新手の復讐?

あ、もしかして、自分と向き合って性格の悪さを改善せよってことなの?

・・・そうね。たしかに、性格悪いかもしれないわ。








「だけど、あなたを見てるとイライラしたんだもん。たしかに、性格悪いわ?

 真正面から嫌いなんて言ったんだから。あなたの言うとおり、悪いわ。

 だけど、しょうがなかったのよ。あなたの笑顔が私から離れなかったのよ?

 嫌いって言えば、勉強にだって集中できると思っていたの。

 私だって、わからないのよ。嫌いよ、嫌い。お願いだから、私の頭から離れて!」




「ちょ、ちょっと待って?落ち着いて、Ms.!泣かないで!」


「泣いてなんか・・・!・・・泣いてたわね。あぁ、もう。情けない。」


「うん、でも、やっぱり可愛いね。君って。」


「・・・はぁ?」


「僕、待ってるから。君が君と向き合うまで。」


「途方もないことだわ!あなたを見てから、混乱しっぱなしなんだから。」


「・・・天然?それとも駆け引き?」


「ねぇ、さっきから何を言ってるの。」


「ふふ、なんでもないよ。あー、可愛い。」


「・・・・嫌いよ、嫌い。甘いものも、あなたも。おだてたって、騙されないから。」








* * *








「・・・で。結果は?」


「待つっていうこと、嫌いじゃないんだよね。」


「つーか、あいつ、ほんとうにニブイな!」


「でも、リーマス。の嫌いが、本当だったら?」


「そうだねぇ。」


「そうだねぇ、って。」








「そのうち、わかるんじゃないかな。」








「ところで、どうして甘いものが嫌いなの。」


「嫌いよ。麻薬みたいだもの。止まらなくなるから。それへの欲望が。」


「じゃあ、僕も君にとって麻薬なんだね。僕は、甘いんでしょう?」


「・・・・やっぱり、嫌いよ。」